【若手/臨床実践家に聞きました】 

 

 

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メンタルクリニッククラルス
辻本 聡先生
インタビュー

 

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

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①どのような分野・現場で臨床に携わっていますか? 

 浜松市の心療内科「メンタルクリニッククラルス」で主に勤務しています。また、週に1日、市内の小・中学校へスクールカウンセラーとして訪問しています。

 


②研究テーマについて教えてください。 

 

 研究についてはまだ手をつけていない、というのが正直な答えです。これから臨床実践の発表を積極的に行い、その中で自分なりのテーマを模索できればと考えているところです。

 


③家族療法は臨床にどう役立ちますか、またどのように役立てていますか? 

 

 クリニックでも学校でも、家族が来談するケースは多いですし、学校の場合は先生方も含めて大勢の人々が登場します。それらの人々の中で、どのような関係性、相互作用が生じているのか、今どのように変化しているのか、あるいはしていないのか、今後変化したとしたらどのようになりそうかなど、「システム」として捉える視点を提供してくれる点で有用であると思っています。
あるケースについてのみ「家族療法」と格別に意識するというわけではなく、来談者をとりまく家族やそれ以外の人々、あるいは治療者として接している自分も含めて俯瞰するための視点の土台、という形で大いに役立っているように思います。いわば認識そのものが役立つので、場を選ばず対象を選ばず、自分が意識さえすれば大変に汎用性が高くなるという点も、役立ちポイントだと思います。

 


④臨床家を志したきっかけ、そしてそのなかでも家族療法家を志したきっかけは何ですか?

 

 いま思い返しても、「臨床家を志した」とはっきり言えるほどのきっかけは思い当たりません。大学、大学院と多くの先生方に様々な教えを受け、経験をさせて頂き、友人たちとたくさんの話をしていく中で、次第に臨床の仕事をしている今の自分になっていったのだと思います。そんな自分ですから、「家族療法家を志す」と思ったこともありません。ただ、「志したきっかけ」と言えるかは分かりませんが、家族療法を実践する上で基礎となっている、システムズアプローチとの出会いはとても重要な出来事として記憶に残っています。そして、その出会いとは、確か2007年の家族療法学会京都大会で1枚の研修会案内をふと手にした時だった、ということになります。

 

⑤お勧めの論文を紹介してください。

 

吉川悟先生と矢野かおり先生の「システム論からみた治療の基本的なことがらについて」(システム論からみた思春期・青年期の困難事例pp223-234,金剛出版,2001)は、面接で直面する疑問に分かりやすくコメントしてあるので、しばしば振り返っています。
また、臨床実践とは少し離れますが2本の論文をあげます。ストルテンバーグとデルワースによる「Supervising counselors and therapists : A developmental approach.」(Jossey-Bass,1987)は、「治療者としての発達」という枠組みでその発達段階を記したものです。大学院の授業で使用したのですが、「トレーニングを受けている自分にいま必要なことは何か」を概観するために思い出しては見直しています。もう一つ、「ブリーフセラピーが心理臨床家の養成に貢献できることは何か」(ブリーフサイコセラピー研究16,30-64.)は、現場の違う4人の先生方がシンポジウムでお話しされたことをまとめたものです。トレイナーをされる先生方の視点からのお話ですが、それだけに学びのエッセンスとも言える内容が詰まっています。現在、「養成されている立場」である私からすると、読むたびに身の引き締まる内容で、自分に“カツ”を入れ直す時に開いています。

 


⑥お勧めの本(臨床心理の本に限らず、臨床に役立つもの全般)を教えてください。

 

家族療法を自学するとき最初に手に取った、吉川悟先生の「家族療法-システムズアプローチのものの見方-」は度々読み返します。初めは難しいと思った部分も学習が進むと理解できるようになり、また新たな疑問も出るということを繰り返せる点がお勧めです。それと、岡田隆介先生の「家族の法則」「こころの援助レシピ」は面接の際に援用させていただくことが多く、これも何度も読み返しています。
 臨床心理以外ですと、哲学者の土屋賢二先生の「棚から哲学」シリーズがいくつも文庫になっていてお勧めします。笑えるだけでなく、当然視していた日常的なことを“こんな風にも捉えられるものなのか”と、視点を巧妙に外してくれるので心地よいです。

 


⑦家族療法のほかにどのようなアプローチを臨床に取り入れていますか?

 

解決志向アプローチ、認知行動療法を折に触れて用いることが多いです。認知行動療法については来談者の希望があることも多いですが、基本的にはいずれの方法も面接の随所で拝借する、という感じです。

 


⑧師・影響を受けた人は誰ですか?

 

④の話と繋がるところですが、京都大会で手にした研修会案内とは、心理技術研究所の高橋規子先生による「システムズアプローチ研究会」のパンフレットでした。それまで、本の読みかじり、学会での聞きかじりばかりで、系統だったトレーニングを受けていない私が初めて継続的に受けることにした研修でした。ロールプレイを基本として「体と頭にたたきこむ(?)」スタンスの研修会で大変に過酷ですが、高橋先生からいただくご指摘が、実践上必ずどこかで役立つものであるから続けられるのだと思います。また、臨床実践上のことに限らず、「やっているつもりになっていたこと」「分かっているつもりになっていたこと」などが「実はそうでもないこと」なのだと気づかされることが多いのも勉強になります。このように、現在の自分の基礎となる部分は、高橋先生から教えて頂いております。

 


⑨臨床家のたまごに先輩として一言
自分もまだ「たまご」とそんなに変わらないものと思っていたので、少し違和感のある質問です。ひとつ、実感していることを言うとすれば、自分が求めて動けば経験と学習の機会には必ず恵まれます。そのためにも、いろいろと動いてみて、様々な人や考え方との出会いを広げることが大切なことだと思います。

 

 

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