若手家族心理学研究/家族療法家に聞きました

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関内カウンセリングオフィス代表 
                                       田中究先生

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 

 

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どのような分野・現場で臨床に携わっていますか?

 

現在は、民間相談機関のカウンセラーと、小・中・高等学校でのスクール・カウンセラーをしております。あわせて、20084月には横浜に「関内カウンセリングオフィス」を開設し、代表を務めながら独自の実践と研究を目指して活動しています。

 

研究テーマについて教えてください。

 

臨床実践を常に中軸に考えて仕事に臨んでいます。どうしたらよりよい面接となるのか、ということを意識しておりますので、特定の対象についての研究というよりも、臨床そのものを研究する臨床研究に関心があります。具体的な形は、学会発表などを通じて模索しているところです。

 

家族療法は臨床にどう役立ちますか、またどのように役立てていますか?

 

家族療法は認識論である、ということがよく言われます。つまり、ものの見方ですよね。個人ではなく「家族」とお会いする、という対象の変化だけでなく、現象をシステムの一部として捉える、という面接者の認識の変化が、家族療法の主張する大事な論点だと思っています。システムとして捉えるからこそ思いつく切り口が見つかることもありますし、家族療法が提示する認識論は常に携えていると思います。その中でも、家族面接、個人面接を問わず、共通して役立っていると思っているのは、来談者と面接者の関係性をシステムとして捉える「治療システム」の考え方です。面接全体を俯瞰する視点として助けになっています。それから、家族面接におけるバランスの取り方や動き方は、複数の方々とお会いする様々な場面で応用しやすいと思っています。

 


臨床家を志したきっかけ、そしてそのなかでも家族療法家を志したきっかけは何ですか?

 

言葉の定義によるとも思いますが、臨床心理関連の仕事に就くことができたとしても、「臨床家を志す」ことは簡単ではない気がします。私の場合は、日常の臨床におけるもがくような経験のひとつひとつが、その契機になっているとは思いますが、特定のエピソードとしては、DVDにもなっている2004年日本家族研究・家族療法学会の大会特別企画「実録・家族療法」において、ロールプレイの家族役を経験させて頂けたことは大きかったです。後藤雅博先生、狩野力八郎先生、吉川悟先生という日本を代表する家族療法家の面接を家族役として直接的に経験することができ、その迫力と繊細さに大変ショックを受けました。また、家族役については、約半年間をかけて、その役となる家族自身が何を考えどのような人生を送ってきたのか、ロールプレイを行いながら身に染み込ませる作業を経て本番に臨んだのですが、その準備のプロセスでは、ロールプレイとはいえ家族の人生に真正面から対峙する経験ができました。その時の家族役の感触は体の一部のようになっており、もうひとりの自分のような気さえします。

 

そのようなわけで、就職し、試行錯誤をしながら臨床家を志し、そして今も臨床家を志し続けているところです。

 

お勧めの論文を紹介してください。

 

システム論についてのコンパクトな解説として、「システム論による学校臨床」(金剛出版)の第1章に収められている、高橋規子先生の「システム理論の概論」は数ある概説書の中でも大変すっきりとしていてわかりやすいと思います。また、ハーレーン・アンダーソン先生とハロルド・グーリシャン先生の論文、「Beyond Cybernetics:Comments on Atkinson and Heath’s “Further Thoughts on Second-Order Family Therapy”」(Family Process,29:157-163,1990)は、臨床に対する一貫した大変強い意思のようなものが感じられ、その気迫に圧倒されました。ハーレーン先生をワークショップでお見かけした時に抱いた、柔和な印象とは大分異なっていました。

 

お勧めの本(臨床心理の本に限らず、臨床に役立つもの全般)を教えてください。

 

吉川悟先生の「家族療法」(ミネルヴァ書房)は教科書的に何度も読み返しています。それから、家族療法関係ではサルヴァドール・ミニューチンの「思春期やせ症の家族」(星和書店)と、吉川悟先生と東豊先生による「システムズアプローチによる家族療法のすすめ方」(ミネルヴァ書房)は、活き活きとした逐語とその発話意図が細かく書かれており、勉強になります。また、門外漢ではありますが、上野千鶴子先生、宮台真司先生といった社会学者の先生方の諸著作には、臨床を考える上でのヒントが満載されていると思います。漫画では井上雄彦先生の「リアル」(集英社)は、「障害とは何か」ということが、まさにリアルに突きつけられてくる作品だと思います。

 

家族療法のほかにどのようなアプローチを臨床に取り入れていますか?

 

家族療法に含まれてしまうとは思いますが、同僚とリフレクティング・チームを臨床場面で用いています。その他のアプローチとしては、認知行動療法、NLP、解決志向アプローチ、EMDR等を必要に応じて取り入れることがあります。

 

 

 

師・影響を受けた人は誰ですか?

 

具体的な臨床実践の仕方は、心理技術研究所の高橋規子先生から教えて頂きました。私がちょうどかけだしの頃、高橋先生の研究会が毎週のように開催されており、ロールプレイによる家族面接のトレーニングを受けにお邪魔しておりました。そこで行われていたのは家族面接のトレーニングではあるのですけれども、「礼儀作法の鍛錬」と言い換えてもいいくらいの内容で、あらゆる指摘を微に入り細に入り受けました。この過酷な?トレーニングが、現在私が臨床を続けていくにあたっての、糧になっているように思います。なにより、社会人として常識的に振舞えることが、心理療法の場面であっても大変重要であることを教えて頂きました。それから、不定期ではありますが、吉川悟先生のお教えは毎回強烈で、影響を受けております。

 


臨床家のたまごに先輩として一言

 

良い師匠と良い仲間に恵まれたら、ずっとお付き合いしていけると、それは幸せなことだと思っています。

 

 

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