【若手家族心理学研究/家族療法家に聞きました】 

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九州女子大学 人間科学部講師
相馬敏彦

 

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)
 
 
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①研究テーマはなんでしょうか? 

 私は、二者関係のありようがそれを取り巻く周囲の対人ネットワークによってどのような影響を受けるのかについて主に社会心理学の立場から研究を進めています。ここでは、恋人や夫婦という関係で暴力がエスカレートしやすい背景を、「排他性」という観点から探ろうとした研究についてお話しします。まず、夫婦や恋人といった親密な関係では、部外者を排除して「二人きりの世界」を目指そうと当事者達が排他的に振る舞うことがあります。この排他性は、一方では関係内での協力的なやりとりを促進する効果をもち、暴力の生じにくさを導きます。ですが、他方で、関係内で対立や葛藤が生じた場合の建設的な対処(適切に主張し反論すること)を抑制するようにはたらきます。なぜなら、強すぎる排他性は、関係の外部にあるサポート源(ソーシャル・サポートの与え手)を利用しなくなることと関連するからです。つまり、「二人きりの世界」に固執するあまり、何か問題を抱えたとしても関係外で味方になってくれる人がいないように感じてしまうのです。葛藤時の建設的な対処が抑制されるということは、関係の相手から何か嫌なことをされてもそれに反論したり主張したりできにくくなるということです。すると、そのような状態がしばらく続くと、相手から暴力を受けやすくなったりそれがエスカレートしたりする危険性が高まります。 つまり、親密な関係ではその特徴である排他性が背景要因としてDVの深刻化に影響する、このことをこれまで実証的に検討してきました。(いくつかの公刊されたものについては私のHPよりご覧下さい。


②その研究テーマを選んだ理由・きっかけを教えてください。 

 学部時代に、嫉妬心や独占欲に関心をもったことがきっかけです。じゃあなぜ、それらのことに関心をもったのかはよく覚えていません。ただ、このテーマへの僕の関心を持続させたのは、周囲にいた人たちが、こういった一見ふざけてそうなテーマに関心をもたなかったことがあったような気がします。
  


③師・影響を受けた人は誰か?

 学部・大学院時代の恩師である山内隆久先生と浦光博先生です。自分の関心に基づいて研究を進めることが楽しいことだと学べたと同時に、研究者にとっていかに飲み屋での討論が貴重なものであるか、そしてそこで楽しむためにいかに普段から体を鍛えておくことが必要なのかを身をもって学べたような気がします。

④現在の研究テーマのほかにどのような分野に注目していますか?

 先ほどの研究テーマ以外では、シャイな人がどのようにして対人ネットワークを拡大していくのかについても注目しています。そこでは、次の謎に焦点をあてています。それは、大学入学などの新たな人間関係が形成される場面で、シャイな人はよく知らない相手となかなか打ち解けられないにもかかわらず、しばらく経つとシャイではない人と同じようにネットワークを拡大できる、それはなぜかという謎です。このことについて、シャイな人は少数ながらも仲のよい友人に社会的な代理人となってもらうことで、対人ネットワークを拡大している過程を検討しています。 


⑤お勧めの本もしくは論文を教えてください。

 「DVと虐待-『家族の暴力』に援助できること」(信田さよ子著、医学書院、2002年)です。
「当事者性の不在」という言葉でもってDV問題を解説している点は、虐待問題について深く理解する上でとても示唆に富むものだと思います。他には古いですが、「寺田寅彦随筆集」(岩波文庫)がお薦めです。物理学の専門的な話は完全には理解しがたいのですが、それでも量的研究と質的研究との違いに関する考察などは分野を超えて意義深い指摘であるように思えます。 


⑥家族心理学に興味を持つ後輩に一言。

 特に僕が言えることはありません。強いて言えば、好きなように研究すればよいと思います。

 

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