【若手/実践家に聞きました】



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 Nova Southeastern University 博士後期課程 

                                     尾崎 望先生


 (先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。) 

 

 

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どのような分野・現場で家族研究・家族臨床に携わっていますか?

 

現在、アメリカ、フロリダ州にて外来の精神病棟で主にPsychosocial Assessment にボランティアとして携わっています。ここでは男性と女性の薬物乱用と精神病のDual Diagnosis グループ、3つのBehavioral Health Group, 摂食障害グループ、トラウマグループ、そしてGay Lesbian グループを含める8つの異なるグループセラピーが行われています。用いられているアプローチは、Solution Focused Approach, MRI Approach, Collaborative Language Approach, Narrative Approach などを含めた家族療法アプローチを始め、Object Relational Approach, Individual Approach, など、個々のセラピストにより全く異なります。傍ら、Nova Southeastern University にて家族療法の博士号に通っています。学校のクリニックでは個人、カップル、家族セラピーに携わっています。

 

研究テーマについて教えてください。

 


 まだ研究テーマははっきりと決まっていないのですが、
Gregory Bateson、Bradford Keeney、そして私の学校の教授のDouglas Flemonsに通じる、セラピーの文脈におけるCybernetic Epistemology、そしてEcology に関する研究をしたいと思っています。いま、必死にベイトソンの”Steps to An Ecology of Mind”を熟読しているところですね。ベイトソン、ブラッド・キーニーを読んでいて思うのは、東洋的な思想への回帰ですね。何らかの形で、研究に東洋的思想を取り入れていきたいですね。

 

家族療法は臨床にどう役立ちますか、またどのように役立てていますか?

 

 家族療法の根本であるシステムズ・アプローチが臨床においてさまざまな可能性を見出せるのではないかと思います。問題は個人にあるのではなく関係性において存在するという概念はシステムズ・アプローチが見出されて数年経った今も斬新だと思います。家族のみならず、ありとあらゆる関係性を扱っていくシステムズ・アプローチは臨床のみならず、日常の対人関係、自分と自分自身との関係、自分と問題との関係そしてあらゆる民族、グループ同士の関係にも応用できる素晴らしいものだと思います。

 

家族研究や臨床家を志したきっかけ、そしてそのなかでも家族療法家を志したきっかけは何ですか?

 

一番のきっかけは何か人の役に立つことをしたいと思ったことでしょうね。数ある中でも家族療法家を志したきっかけはミルトン・エリクソン博士のとってもユニークでクリエイティブで、かつクライエントのリソースを生かしたテイラーメイドのセラピーに憧れたからですね。あと、“ブリーフセラピーの登竜門”を読んで、先生方のブリーフセラピーについての談話を読んで、“セラピーはこんな楽しそうなものなんだ”と感銘を受けたこともありますね。で、臨床を始めてから改めて家族療法はクライエントに問題を押し付けず、クライエントの世界観を尊重する素晴らしいいアプローチだと思います。

 

家族療法のほかにどのようなアプローチを臨床に取り入れていますか?

 

上記したように、禅やTaoismの思想を日々の生活に意識して取り入れているところです。日々考えていることや信念なんかが臨床に自然に現れていくのだと思います。例えば、“Zen Mind, Beginner’s Mind”で鈴木俊隆(シュンリュウ)が”But just to live is actually to live in problems. And to solve the problem is to be a part of it, to be one with it.”と言っています。僕が興味があるRelational Therapyの変化の原理はまさにこの言葉に表れています。

 

お勧めの論文を紹介してください。

 

お勧めの論文は数え切れないですが、頑張って絞ってみます。家族療法を志した初めから、今までお世話になっている、Bradford Keeney の数ある論文の中でも、 “Ecosystemic Epistemology: An Alternative Paradigm for Diagnosis,”  “Ecosystemic Epistemology : Critical Implications for the Aesthetics and Pragmatics of Family Therapy” などが好きですね。後、Rachel Hare-MustintoとJeanne Marecekによる”The Meaning of Difference”  Steve De Shazer による”The Death of Resistance” なんかも好きですね。“The Meaning of Difference”はPostModernism に関する論文で“あーなるほど、こんな風に概念についての意味が変わっていくんだ”って感激しました。“The Death of Resistance”は家族療法の論文史において重要な位置を占めるのではないでしょうか。家族システムから、セラピストを含めた家族療法システムへの変換はセラピーの概念を覆したのではないでしょうか。さらにDouglas Flemonsによる”Consensus/Dissensus: A Relational Alternative to the Metaphor of Power”は今でも家族療法家の間で意見が分かれる、支配性、コントロール等の観念についての議論にRelational Approachの立場から新しい見方を提案した素晴らしい論文だと思います。 詳しい内容については是非とも下記に記した論文を参照して下さい。
 『Flemons, D. (1989) Consensus/dissensus: A relational alternative to the metaphor of power. Journal of Strategic and Systemic Therapies, (2 &3), 58-64.

 

お勧めの本(臨床心理の本に限らず、臨床に役立つもの全般)を教えてください。

 

やっぱり”Steps to An Ecology of Mind” はお勧めですね。ベイトソンの文章は難しくて読むのが大変ですが、読み出してちょっとしてから起こるちょっとした疑問や新たな考えがセラピー、そして日常生活にもたらす変化は素晴らしいものだと思います。あと、アメリカで家族療法を学び始めてから改めて、日本を始めとする東洋のプラクティス、主に禅とTaoismに目を向けています。数ある文献の中でも“Zen Mind, Beginner’s Mind”はとっても読みやすくて、理解しがたい素晴らしい本だと思います。この本はちなみに僕の所属する博士号のコースの一つの教科書です。 あと、 “the Tao of Pooh”は読みやすいTaoismについての本で、個人的にクマのプーが好きなのでお勧めリストに入りました。そして僕の所属するプログラムの教授であるダグラス・フレモンズ(Douglas Flemons) の”Of One Mind”を用いられているアプローチに関わらずセラピストの皆さんにお勧めします。この本は催眠のロジックの視点からみたセラピーのプラクティスに関する本ですが、催眠を用いる用いないに関わらずセラピーのコンテクストにおける、セラピストとクライエントの関係性、クライエントと彼ら自身の関係性、そしてクライエントと彼らの問題についての関係性の側面からとてもプラクティカルな提案をしています。彼については師・影響を受けた人の欄で紹介させてもらいます。何時か機会があればこの本を日本語訳してみたいなと思います。

 

師・影響を受けた人は誰ですか?

 

僕のプログラムの教授の一人であるダグラス・フレモンズにはかなり影響を受けさせて貰っています。彼はグレゴリー・ベイトソンのアイディアとタオイズムを融合した彼独自のセラピーアプローチに関する本、“Completing Distinctions”を著しています。簡単に彼のアプローチを紹介すると、僕がその理論を理解する限り、問題を取り除くとすればするほど、その問題は悪化します。例えば、ある考え、不安、恐怖などをコントロールしようとすればするほどそれらがより強く、大きくなった経験がないでしょうか。関係上の問題、例えば、暴力、セックス・パフォーマンスなんかも問い詰めれば、相手が自分から去ってしまうかもしれないという恐怖なんかが根底にあるかもしれません。フレモンズが提案している解決法は、そのクライエントと彼らの問題の関係、さらに/または(and/or)そのクライエントと他のクライエントの関係に変化をもたらすことです。それらの関係上において変化をもたらす方法として、提案や疑問なんかを用いて、その問題に興味を持ってもらう、またはその問題が表れた文脈を理解してもらい、その問題に対する態度(関係性)を変えていきます。その結果、その問題は問題ではなくなり、解決するというものです。Flemons は上記した本を著した他、彼の奥さんであり、同僚のShelley Green と共に、”Quickies: The handbook of brief sex therapy” を編集しています。それぞれの章の著者がブリーフセラピーを用いたセックス・セラピーに関して書いています。

 

臨床家のたまごに先輩として一言

 

僕自身がたまごなので先輩としての一言より、同じたまごとして一言、言わせて貰います。たまごはたまごとしてたくさん学んで、経験していかなければならないことがあるでしょうが、たまご独特の新しい疑問、考え、意見、挑戦を何時までも大切に持っていきましょう!鈴木俊隆が言ったように、概念の物事に誠心誠意打ち込むことのできる“初心”を大切に。

 

 

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