【若手/実践家に聞きました】

 

karatsunaoko

 

 

システムズアプローチ研究所/
コミュニケーション・ケアセンター
唐津 尚子先生
インタビュー

 

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 

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①どのような分野・現場で臨床に携わっていますか? 

 所属先が開業臨床なので、そちらがメインになります。が、スクールカウンセラー、教育委員会直属の相談員(学校や教育支援センターなどの相談を雑多に取り扱うような感じの仕事です)、心療内科での心理面接などです。 

②研究テーマについて教えてください。 

 正直、『研究テーマ』というほどのたいそうなことを普段意識してないので、その質問は難しいです・・・。目の前にある臨床の仕事をこなしていくことで精一杯と申しますか・・・。
 学会で発表することが多いのは、「うつと家族・家族療法」の絡みについてなので、『普段考え込んでいること』というレベルであれば、それが今のところテーマになるのでしょうか・・・。
 開業臨床を主たる臨床現場としている私にとっては、うつ病/抑うつ状態のクライアントの相談ケースが、全体のケースに占める割合が以前からかなり高いです。そして臨床においてシステムズアプローチをものの見方・考え方の支柱においているので、そのクライアントがうつに陥るまでの、その方の周囲の人間関係とのパターンについて考え、そのパターンを変えていくということを意識してケースに当たっております。
また、クライアントのうつの回復に向けて、ご家族にご協力いただくやり方がスムーズに進むことで、我々"専門家"の働きかけだけでは提供できない、回復に向けてのパワーをご家族から提供していただける。また、うつが再発することを予防するという視点においても、ご家族がクライアントに与える影響は大きいです。身近にいらっしゃるということ、クライアントの普段の様子を観察できるということ、それを客観的に表現してくださるということ、その表現において使われる"言語"は、クライアントの使い慣れた"言語"に近いものであるということ、だからクライアントも腑に落ちやすい。私たち"専門家"は、その効果をより増幅させるためにクライアントやご家族と関わっているという感じを自分自身は持っています。その過程において『何が起こっていたか』を記述(あくまでTh.サイドの切り取り方でしか記述できていませんが)しています。そして、その過程を記述することで、ある程度セラピーのパターンを作ったり整理しているところがあると思っています。

 


③家族療法は臨床にどう役立ちますか、またどのように役立てていますか? 

 

 人は1人で存在して、ひとりでに勝手に問題をもったりしないですよね?家族療法をすることによって、その何らかの問題をもつ「個人」がどのような位置に存在して、どのような影響を受け、その絡みでどのようにこの場(相談の場)に問題(と枠組みづけているもの)を持ち込んでいるかということを、解決のための視野に入れることができるようになった点が、臨床の役に立っているのではないかと思います。
 「家族療法」(というよりシステムズアプローチ)での視点を、学校で仕事をするときに結構役に立てています。多くの人々が関わるシステムの中で、相談対象になっている方がどのような位置に存在していて、どのような影響を受け、現状があるのかということや、解決を図るためにこの学校システムのどのような側面が、この対象者にとって活用できるのか・・・という視点を持ち込むことで、限られた時間の中で、私1人が何とかしなければ・・・と無茶な気張り方をせずとも、解決方法が構築されていくということにつながっているように思います。

 


④臨床家を志したきっかけ、そしてそのなかでも家族療法家を志したきっかけは何ですか?

 心理臨床を仕事にする前に、全く畑違いな仕事をいくつかしておりました。その一つに「塾講師」というものがありまして。その時、学習の実力としてはたいして問題がなく、学習態度も真面目で、集中力も持ち合わせている子どもさんが、何故かテストになると実力を発揮できなくて、「なんでなんやろう・・・?」と不思議に思うようなことがありました。
その子の話をじっくり聞くと、親御さんがプレッシャーをかけようと意図しているわけではないものの、結果的には親御さんの働きかけがプレッシャーになってしまい、テスト本番になると緊張し過ぎてしまう、結果びっくりするくらい悪い点数が返ってきて、親身に応援している親御さんが落胆し、その様子を見て本人も落ち込み、焦り、よりプレッシャーがかかり・・・ということを繰り返しているということが見えてきました。
その時は一生懸命な親御さんの思いも伝わってきましたので、「塾の先生」として、親御さんの思いも自然と尊重しつつ、子どもさんの思いをお伝えして、「今は結果よりもお勉強している過程を褒めてあげて頂けると、自信がつくのではないか」とのお話をさせて頂いたところ、その親御さんはしっかりと理解してくださり、その子どもさんへの働きかけが変わって、急激に成績が上がったということを経験しました。その時に、「人の心って不思議やなぁ。そこに何か働きかけるような仕事ができたらいいかもなぁ・・・」と考えるようになりました。その時に、「家族との絡みで考える」という視点は大事かも・・・」ということも感じました。そのようなことが、きっかけの一つになっております。 


⑤お勧めの論文を紹介してください。


  ・ 崎尾英子先生『ダブルバインド理論の今日的意義を考える』(家族療法研究第6巻第2号 1989)
『登校拒否、家庭内暴力などを有する家族に見られる二重拘束特性とその治療』(慶應医学第68巻第3号 1991):
家族療法についてもうほとんど何も知らない状態のヒヨコ時代に読んでも、ダブルバインド理論について、他の文献よりもすんなり私の中に入ってきました。で、崎尾先生が参考文献に挙げておられるものを「読んでみようかなぁ・・・」という気持ちにさせてもらえました(で、挙げておられた参考文献は、読んでみてもちんぷんかんぷんだったのですが・・・)。

・ 吉川悟『治療システムのコミュニケーション-〈関係〉の規定に関するコミュニケーション-(家族心理学年報11 1993):
ヒヨコ時代は、毎日のように「コンテンツとコンテクスト」だの「枠組み」だの、日本語として理解はできている筈であるにもかかわらず、何だかスッキリしないというか、「わかった!」と胸を張って言えるほど理解できていない感に襲われ続けていまして、そんな頃にこれを読んで、何となく普段指導されていることとつながった覚えがあります。また、普段面接をしているときにいかに何も考えずに言葉を発しているかということも、読んでいて意識しました。 
  

 


⑥お勧めの本(臨床心理の本に限らず、臨床に役立つもの全般)を教えてください。

 

・ 岡田隆介先生の『家族の法則』は、「なるほど!」と目からウロコでした。しかも楽しく読みやすい!臨床現場でも研修を頼まれて講師をする時にも、すっごく役に立ちます。まだこれから家族療法を学ぼうとされている方には、とてもとっつきやすい本なのではないかと思います。 ・ 漫画ですが、深見じゅんさんの『ぽっかぽか』は、リフレイミングのヒントになるかもしれません(そのような視点で読むからそう思うだけかもしれませんが・・・)。
・ これまた漫画ですが、成田美名子さんの『CIPHER』は、同じ事象を別の角度、別の人から見ると感じ方・捉え方がこんなに違うんだ・・・ということを気づかせてくれ、家族療法を行っている者としては、「誰か1人の話を聞いただけで、その事象全てを理解したかのような錯覚に陥ることの危険性」について考えさせてくれる一作です(これもそのような視点で読んでいるからそう思うだけかもしれません・・・)。 

 


⑦家族療法のほかにどのようなアプローチを臨床に取り入れていますか?

 

 条件が揃えばたま~に動作法を用いることがあります(最近は少ないですが・・・)。あとは、本を読んで「なるほど!」と思う度、エッセンスを取り入れるという程度であれこれチャレンジしています(認知行動療法とか・・・)。

 

⑧師・影響を受けた人は誰ですか?

 

 挙げ始めるとキリがありませんが・・・
・ 吉川 悟先生: 師匠です。今でも事ある毎に叱り飛ばされております。この方に導かれて家族療法をしておりますので、影響を受けたというより、この方が居ないと今の自分は存在しません。
・ 山縣千鶴子先生・阪幸江先生: 職場の先輩です。この方達の面接をヒヨコの頃から盗もうと頑張ってきました(当然同じことはできませんが・・・)。また難解な師匠の教えで頭が混乱しているところを、別の角度で教えてもらってきました。
・ 岡裕子先生・田中究先生・馬場安希先生・安江高子先生・矢野かおり先生: ほぼ同じ時期に臨床を始めて、意見交流(時には意見のぶつけ合い)をしたり、励まし合ったりしてきました。それぞれの臨床に対する動きが刺激となって「自分も頑張らねば・・・!!」と思い続けることができています。

 

⑨臨床家のたまごに先輩として一言

 

 「世の常識」は知っていて、それを踏まえることは当然ですが、でもそれに縛られていると、新しい枠組みをクライアントに提供することはできない・・・現在自分自身も難しいと感じていますが、そのバランスを上手く掴んでいただけるような学習を積んでいただければ・・・と思います。 

 

 

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