【若手家族心理学研究/家族療法家に聞きました】

 

kaminishihajime

 

 

 

 

 

仙台市スクールカウンセラー
上西 創 先生

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 

 

 

 

 

どのような分野・現場で臨床に携わっていますか?

 スクールカウンセラーとして中学校2校と小学校1校、あとは内科のクリニックでカウンセリングをしています。もともと学校臨床には興味があったので、今の仕事は楽しくてしょうがないです(笑)クリニックの方も小学生からお年寄りまでいらっしゃるので、非常にやりがいを感じています。 

研究テーマはなんでしょうか?

学部・修士ではTV電話などをつかった遠隔地間でのカウンセリングに興味がありました。コミュニケーション理論では、一つ一つの行動が関係性に影響を与える事が示唆されています。また、その関係性が行動の意味を拘束する(決定する)ことも示唆されています。TV電話などのいわゆるマルチメディアは、対面では作り出せない情況(例えば、意図的に視線を合わないようにさせる、音声を変える、一方だけにTV画面を表示しもう片方は音声のみにする、縦横比を調整して間抜けな顔にする、など)を容易に作り出せるため、行動や関係性の変容を招くのに良いツールになるのでは、と今でも考えています。また、純粋に遠隔地や身体的障害などで中々カウンセリングを受ける機会のない方への間口を拡げる意味でも使えると思っています。  現在は中々研究としての時間は取れずにいますが、クリニックでの臨床を通してパニック障害や鬱の患者さんが増えていると感じているため、それらへの家族療法の活用に関して興味があります。 

家族療法は臨床にどう役立つか、どう役立てていますか?

 考え方の枠を取り外してくれたのが家族療法だと思っています。IP本人だけではなく、家族や教師、職場の同僚などにまでアプローチできるという事はそれだけで解決への方法が広がりますし、困った時にCLに「困ったねぇ。どうしよう?」と伝えるのもアリ。無論、そうすることへの理論はしっかりとあるわけですが、何より「こうしなくちゃいけない」「これをしちゃまずい」と考えていた自分の枠組みを壊してくれたのは非常に大きかったと思います。  同様に、様々な理論や技法を治療に活用できる柔軟性も家族療法ならではだと思います。交流分析やゲシュタルト的なものの見方、認知行動療法的な介入やアサーション・構成的エンカウンターなどを使ったソーシャルスキルトレーニングなど、様々な理論・技法を学ぶ機会を与えてくれたという意味でも、非常に役立っています。 

家族療法家を志したきっかけは何ですか?

 私が岩手大学の学部3年生の時、夏季の集中講義で故・小野直広先生がいらっしゃいました(たしか「心理療法」という講義だったと思います)。その時の講義が心理療法の中でも特に短期療法を取り上げたもので、これが非常に面白かった。小野先生をご存知の方はお分かりになると思いますが、先生はユーモアに長けたお方で、短期療法での成功ケースや失敗ケース、その理論などについてユーモラスに語ってくださいました。このとき、まだ心理学について右も左もわからない上西青年はこう思ったわけです。 

「あ、カウンセラーってこんなんでいいんだ。」

今にして思えば大変失礼な話ではありますが、それまで具体的ではなかった自分の将来について、明確なビジョンが浮かんだのがこのときでした。これが短期療法との出会いであり、のちの短期/家族療法家である長谷川啓三先生との出会いにつながる第一歩でした。この後、岩手県のSFA研究会に参加させていただいたり、小野先生のご著書を読んだりしながら、臨床家への夢を暖めていました。実は、学部生の時は小野先生が教鞭を取られていた東北福祉大学への進学を考えていました。ところが私が学部4年の時、小野先生が急逝なされました。急に目の前が真っ暗になり、どうしていいかわからずにいたとき、先輩である一井直子さんから同じく短期療法を研究されている長谷川啓三先生を紹介して頂きました。一井さんは学部の先輩で東北大学の長谷川先生の研究室に進学されており、私が呆然としているのを見かねた織田先生が一井さんに声をかけてくれたそうです。  なんというか、沢山の偶然の出会いや周囲の方々の好意があって、やっと家族療法に出会えたと思っています。 

お勧めの本(臨床心理の本に限らず、臨床に役立つもの)を教えてください。

「臨床面接のすすめ方-初心者のための13章」(日本評論社)がオススメです。面接をする際の細かい部分での技法や注意点から虐待や自殺企図などへの危機介入の仕方など、様々な要素が事例を含めながら解説されている一冊です。療法によらず、臨床に出る前に読んでおいて損はないと思います。 
 あとは、臨床と関係ありませんが、村山由佳さんの「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズは恋愛小説として最高にステキだと思っています。「最近、さわやかな恋愛してないなぁ」と思う方はぜひご一読ください。 

師・影響を受けた人は誰か

 前述した小野直広先生は、集中講義の時にしかお会いした事がありませんが、この道に入るきっかけを頂いたという意味で非常に影響を受けています。また、SFA研究会を紹介して頂き、その後の進路について相談に乗っていただいた岩手大学の織田信男先生には感謝の念が絶えません。  家族療法に関しての恩師は間違いなく長谷川啓三先生です。セラピーにはユーモアが必要だ!ということを非常に深いレベルで教えていただいたと思っています。また、コミュニケーション論についても体感的に時には自虐的に教えてくださった姿は今でも忘れる事ができません。 

こんなことがありました。


ゼミの最中に話がノってくると、長谷川先生はよく我々とはパラダイムが異なるユーモアを発揮されます。到底凡人には理解不可能なユーモアですが、唯一それを解するODがいました。長谷川先生は明らかにみんながご自身の発したユーモアを理解していないと感じたとき、ちらっとそのODの方を見ます。すると、察したODが的確なツッコミを入れる、と。なんとステキなコミュニケーションでしょう。視線を送るという先生の行為が、ODの次の行為を「ツッコミを入れる」というものに拘束しているわけです。 
 このような事は枚挙に暇がありません。ただ文献を読むだけではイマイチ理解の出来ない事柄も、このような長谷川先生の姿勢により、非常に分かりやすい形で理解できたと思います。 

臨床家のたまごに先輩として一言

 面接の理論や技法はもちろん必要ですが、+αの部分があるといいなぁと常々思っています。今、私は中学校でのスクールカウンセリングの中にグループワークを積極的に取り入れています。昨今、予防的カウンセリングとして注目されているグループワークですが、これには中学・高校時代にやっていたジュニアリーダーというボランティア活動での経験が活きています。これはたまたま中学校の生徒指導主事に「PAやれる?」と聞かれて「何ですか、それ?」と聞き返したときに聞いた話の内容が、ジュニアリーダー時代にやっていた様々なゲームを理論的に展開していくというようなものだったため、「それならやれそうです」ということで始まったものでした。 何が幸いするか、役立つかわかりませんが、勉強以外のことをいろいろとやってみることを強くお勧めします。やっぱり、何か「ウリ」があると魅力的なカウンセラーに見えるものですしね(笑 

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