【若手家族心理学研究/家族療法家に聞きました】

 

iwamotoshuhe

同志社中学校・高等学校

岩本 脩平 先生

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 

 

 


 

ーどのような分野で臨床に関わっていますか?

 学校臨床の分野に携わってきました。大学院を修了してから現在まで勤務している私立中学校では、生徒が困った時や気持ちが疲れた時に利用することができる別室を作ったり、生徒のストレスチェックを実施したり、教室に授業支援員を派遣する仕組み作りをしたりと、教育相談や特別支援教育の拡充にかかわる仕事をしてきました。また、週1日は市内の公立中学校でスクールカウンセラーとして勤務しています。

 

ー主な研究テーマを教えてください

 主に関心を持っているテーマは2つです。まず、学部の頃から関心を持ち続けているのは不登校問題です。不登校の生徒を家庭から教室へとつなぐ過程において、有効な働きかけや学内の仕組みの在り方について、日々の実践の中でも模索しています。また、予防的観点からすれば、不登校対策は「中1ギャップ」をいかに埋めるかという課題と重なる部分があると考えています。学校で勤務する心理士として、個別対応が必要な生徒の「中1ギャップ」を埋めるための手立てを考えていきたいと思います。

 2つ目に関心を持っているのは、リフレクティング・プロセスの実習場面への活用です。数年前から授業補助員の学生さんや学校臨床の実習生さんの活動をコーディネートさせていただいていますが、学生さんたちが自らの活動を振り返る際に指導者側が一方的にコメントをするよりも、リフレクティング・プロセスを用いることで彼らの「腑に落ちる」体験を提供できるのではないかと考えています。

 

ー家族療法は臨床でどう役に立っていると思いますか

 「相互拘束」の考え方は教育現場においては有益な視点だと思います。問題を呈している生徒の内面に問題があるとするのではなく、周囲の働きかけがその生徒の問題行動を拘束し維持していると考えることで、生徒の行動変容を促す関わり方を模索できるようになるからです。特に特別支援教育を行っていく上では、欠かせない概念だと感じています。

「相互拘束」の概念が重要なのは授業でも同じです。校種は違いますが私も大学で講義をさせていただいています。その中で、講義中に学生さんが寝てしまうのは、試験で良い成績がとれないのは、小レポートの空白が多いのはどうしてなのかといった悩みを持つことがあります。この問いに対して、「あの学生は怠けているから仕方がない」と、個人内に問題が存在しているかのように見てしまうと、教員側からの工夫は行われません。一方、「相互拘束」の観点から見れば、「現在の授業のリズムが学生さんを眠たくさせているのかもしれない」「大切な部分を講義中に強調できていないのかもしれない」などと考え、授業を改善することができます。「生徒は教師の鏡」と言われますが、まさに学生さんの反応は私の至らない講義を修正するように「拘束」してくれていると感じます。

 

ー家族療法家を志したきっかけを教えてください

 大学院時代にロールプレイの授業を担当して下さっていた花田里欧子先生(現:東京女子大学)に相談をしたことがきっかけになりました。当時、自分の軸となる理論を探していた私に、『よくわかる!短期療法ガイドブック』を紹介してくださいました。見立てにつながる理論の緻密さ、ユーモアに富んだ介入、見立てと介入をつないでいく言葉の用い方など、短期/家族療法は鮮烈なインパクトがありました。

それからというもの、短期/家族療法を学びたい有志のメンバーで『精神の生態学』や『コミュニケーションの語用論』を読みあったり、リフレクティング・プロセスを用いた面接練習をしたりするようになりました。小手先の技法だけに偏ることなく、理論と実践の両面を大学院時代に学ぶことができたことがありがたかったと感じています。

 

ーおすすめの書籍・論文はありますか?

『変化の原理』(ポール ワツラウィック (著), リチャード フィッシュ (著), ジョン・H. ウィークランド (著))が好きです。短期/家族療法はその介入や質問法の派手さから、技法に関心が向きやすい傾向にあるように思います。しかし、その背景には「変化」についての理論があります。この理論を知っているか知らないかで、自分の実践を振り返る際の精度は大きく異なるのではないでしょうか。MRIの先人たちが、理論をいかにして実践につなげていたのかを知ることができる一冊だと思います。

 

ー影響を受けた師・先生は誰ですか?

多くの先生に影響を受けましたが、あえて挙げるとすれば、2名の先生です。まずは短期/家族療法への扉を開いてくれた花田里欧子先生です。ゼミ生でもない私に短期/家族療法を学ぶ機会を提供してくださいました。大学院を修了した後も、スーパーバイザーとして、研究の師として、あるいは「短期療法を学ぶ会京都」のリーダーとして引き続きご指導いただいております。

また、大学院時代にご指導いただいた内田利広先生には、学校臨床や臨床家としてのスタンスを教えていただきました。興味・関心のある内容を自由に追求することができたのは、いつも温かく見守ってくださった内田先生の存在があってこそだと思っております。2014年に開催された家族心理学会第31回大会では、内田先生が大会長、花田先生が事務局長を担当されました。お二人の下で共に実行委員として活動できたことは、うれしい記憶として残っています。

 

ー家族療法のほかにどのようなアプローチに注目していますか

 有効なアプローチであれば、どのようなものでも活用したいとは思うのですが、最近研修に参加させていただいたのは「ホログラフィ・トーク」です。ホログラフィ・トークとは、軽催眠状態で行うトランスワークで、トラウマ等への治療に用いられます。身体感覚に注目する点や、イメージを用いて行う点が以前に学んでいたフォーカシングと通じるところがあり、馴染みやすさを感じました。

 

ー臨床家のたまごに先輩として一言お願いします

 自分の趣向に合う理論に出会うのは、人それぞれタイミングがあると思います。学生の間に見つけられることもあれば、なかなか見つからないこともあるでしょう。とはいえ、現場に出る時に「何となく折衷派」では、臨床家としての専門性が担保されないのではないでしょうか。自分に合う理論を探し、学ぼうとする姿勢は常に必要だと思います。最初は「とりあえず」とか、「お試しで」という気持ちで構わないので、まずは本を手に取って、そして関心のある研修会に参加して自分にとって「もっと学びたい」と思える理論に出会って下さい。

 

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