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【若手/実践家に聞きました】

 

京都教育大学

花田里欧子 先生

(はなだ りょうこ)

 
 
 
 
 

①どのような分野・現場で臨床に携わっているか

 病院臨床(心療内科,精神科),教育臨床(小学校、中学校、高等学校、専門学校、大学附属心理教育相談室、学生相談)にたずさわってきました。

②研究テーマはなんでしょうか?

 相互作用パターンの実証を研究テーマとしてきました。博士論文では,パターンは関係を反映するというBatesonらのコミュニケーション理論の主張を基に仮説を立て,相互作用におけるパターンが人間関係を記述し得ることを,情報理論の冗長性という概念を通じて検証しました(『パターンの臨床心理学―G.Batesonによるコミュニケーション理論の実証的研究―』,風間書房,近刊)。現在は,この博士論文の方向性を持ちつつ,いくつかのプロジェクトにかかわり,相互作用パターン研究をすすめています。

③家族療法は臨床にどう役立つか、どう役立てているか

 臨床の実践や研究を行う上で家族療法を軸としてきましたが,最近は,特に教育という作業を,私自身が理解するのに役立てています。なかでも,Batesonの拘束bind概念は,講義やゼミ,講演や研修等といった,学生さんや受講者の方々とのやりとり(相互作用)を実行していく上で,欠かせないものになっています。それは,私がその場で提示する情報は,「それを受け取る者の反応を一義的に決定はしないが,その選択幅を制限する」(長谷川,1991;1993)ものでしかないということです。同じ情報を受け取りながら,情報の受け手が示す反応の多様性は,発し手である私にとって,嬉しいものにもなれば,がっかりするものにもなります。それを,受け手や発し手の能力や性格等の問題と言うこともできます。また,多様性は相互作用の宿命でもあります。しかし,一方で,おたがいのやりとりの行いかたということに工夫の余地がないかどうか,家族療法を背景にしながら,目下模索しています。

④家族療法家を志したきっかけを教えてください。

 様々な心理療法の中で,家族療法が,面白くて納得がいくものに感じられたからです。

⑤お勧めの本(臨床心理の本に限らず、臨床に役立つもの)

 Bateson, G. (1979). Mind and nature: A necessary unity: Advances in systems theory, complexity, and the human sciences. New Jersey: Hampton Press.ベイトソンG. (2001). 精神と自然―生きた世界の認識論―. (佐藤良明, 訳) 東京: 新思策社.です。「精神と自然」で特に気に入っているのは,彼が勤務先の大学で行った,ゆでたカニをおもむろに袋から取り出しつつ行った,授業でのユニークな問いかけと学生の間のやりとりの一幕です。Batesonのパターンの思想が比喩的に,明快に問いかけられていると思います。

⑥師・影響を受けた人は誰か

 指導教員である,東北大学大学院教育学研究科の長谷川啓三教授には,私が大学院の進学先を東北大学に決めた研究室訪問時から,博士課程修了後の現在に至るまで,筆者が歩む先を照らしていただいてきています。また,長谷川研究室では,先輩から後輩まで多くの方々と共に,ゼミや研究会等での議論を通じて,得難い有意義な大学院生活を過ごすことができました。とりわけ,諸先輩方には,研究室訪問のために長谷川研究室に初めて問い合わせをした時から現在に至るまで,常に温かく親身になっていただき,大変お世話になりました。なかでも,長谷川研のコミュニケーション研究を切り拓かれた若島孔文氏からは,研究や臨床に取り組むことの実際を学ばせていただきましたし,研究の内外の機会を共有させていただくことの多い生田倫子氏には何かと支えていただきました。

⑦家族療法のほかにどのようなアプローチに注目していますか?

 法教育に着目しています。法教育のありかたを考えていく上で,家族療法の観点が有効になるのではないかという仮説を持って,海外での調査や共同研究をすすめています。

⑧臨床家のたまごに先輩として一言

 誤解を覚悟で申し上げますと,心理臨床家は,胡散臭いあやしさと隣り合わせにあるということ,そのようにみられがちであるということの自覚が必要だと思います。ですから,あやしさを減じていくことが大事だと思います。私は,理論を持ち,実践し,研究していくことが,そのあやしさを減じる方法だと思って,そうすることによって,私自身あやしくならないようにしています。
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