【家族心理学研究者の第一人者にインタビュー



ミシガン大学ターナー総合病院ソーシャルワーク部長福祉心理学者
 

 

Ruth Campbell先生

ruthcampbell

 インタビュアー:生田倫子 

東海林麗香 
          高橋誠 
          下川恵

 

 

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 

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先生の御領域/ご研究のテーマをわかりやすく教えてください。

 

はじめから老人介護に興味がありました。この30年間で老人介護を取り巻く状況は本当に変わったと思います。今やっている調査は、介護者と利用者の家に行って介護保険のサービスや介護者と利用者の関係などを研究しています。嫁と姑に別々にインタビューし、二人の意見を聞いています。嫁姑の関係はいつも悪いわけではありません。いいときも悪いときもあります。大切なことは嫁と姑の関係がどういう風にはじまったかということです。また、何がよかったことなのか、そして何が難しかったのかを聞くことが、インタビューで重要だと思います。 最近の嫁さんは、腹を立てている人が多いような印象を受けています。今は姑との関係は良好だとしても、過去に姑との間に起こったよくなかったことを忘れません。そのときのことを「姑は悪い人だった」や「厳しい人だった」と覚えています。そして、今の姑さんは昔に比べると弱くなったように思います。もちろん、たまに嫁姑関係がいいケースがありますが、ほとんどの場合はうまく行っておらず、嫁はとても腹を立てています。 日本の考えは嫁と姑はいつも仲が悪いとしている部分があるけれども、すべてが悪いわけではなくて、満足している時もあります。日本では、嫁姑の研究は葛藤を対象としていますが、嫁姑関係はいい時もあると思いますよ。しかしながら、30年ほど前は、たくさんの嫁から「お姑さんからなんでも習いました」ということを聞きましたが、今はそのような関係性を持つことがだんだん難しくなりました。昔は、姑から色々学ぶことができるような関係でしたが、今は冷たい関係になったと思います。時々、昔はよかったなと思うときがありますが、昔の嫁姑の関係は厳しいものだったので、多くのお嫁さんは大変だったと思います。 日本では、「嫁と姑の関係がよくない」と思っていますが、アメリカでは母と娘が葛藤していると考えられています。アメリカの場合は、一般的なイメージにおいて母と娘の関係が難しいと思われてます。それは、娘が母の反対を押し切ることが多かったからです。最近は母と娘が密接な関係を持っていることが増えてきたようなので、その考え方も大分変わってきたように思いますが、30年ぐらい前は母と娘の考えや価値が違っていたために葛藤がおきていました。日本においては母娘の関係は良く、嫁姑の関係は悪いと考えがちですが、私はそのような考え方は好きではありません。母と娘の関係と嫁姑は違うけれども、両方とも簡単なことではないからです。 また、介護に関してですが、日本では嫁は姑の介護をすることが義務ですが、実の娘は介護が義務ではなく、自分の選択で決めます。私がソーシャルワークに入る場合、嫁姑の間にニュートラル(中立的)な人間として入ります。多くの場合、お互いがいつもちゃんとしなきゃいけないと思い、うまくいかなくなっています。我慢していることはお互いにとってよくないことなので、中立の立場にたって話を聞きます。

 

もともとの興味は嫁姑ではなく、どちらかというと介護のほうでしたか?

 

介護と嫁姑の問題は関係がとても深いと思います。どのように考え、どのように感じているかという介護者自身の気持ちが大切になってきますから。この人嫌いだと思うことは介護がうまくいかない一因になっていると思います。

 

②どのような問題意識から活動/研究をしていらっしゃるのですか。

 

介護者ストレスの問題について興味を持っています。高齢者が自分の自立と自分の気持ちをどう思っているのか、介護の内容はどのようなものであるのか、介護保険のサービスがどのように行われているのかなど、介護者のストレスに関することを研究しています。  研究チーム参加するきっかけは老研の高橋龍太郎先生のレポートを読んだことでした。私と東洋大学の須田木綿子先生は共著で本を書きましたが、その須田先生と高橋先生が一緒に研究をなさっていました。私はそのプロジェクトに興味がありました。最初はみんなで集まっていろいろ考え、須田先生と高橋先生を含めた10名ほどで質的研究を行いました。 

 

③先生の師は誰ですか。また、影響を受けた人物を教えてください。

 

アメリカのElaube Brodyという方です。25年前ほど前、老研で三世代の調査をやっていました。Elaube Brodyはアメリカの方ですが、日本の研究をしていました。調査では、大学生の女性と40~50歳の女性、高齢者とを比較していました。

 

④さしつかえなければこの領域に興味をもたれたきっかけを教えてください

 

アメリカでも研究をやっていましたが、ほとんどソーシャル・ワーカー(SW)をやっていたので、研究といっても趣味のようなものでした。主な仕事は外来の高齢者と介護者のソーシャル・ワーカーをやっていました。アメリカでは、SWとして来談者にカウンセリングと、ケアマネージメントをしました。グループカウンセリングもしました。 アメリカの心理学者は主に幼児や青年に興味があり、高齢者のことにあまり興味がないように思えます。SWの方が、高齢者に興味があります。SWのカウンセリングは精神科医や心理学者よりも費用が安いこともあり、高齢者がよく利用します。また、ミシガン大学はSWと心理学で高齢者の専門家が多く、チームで研究をやっているのもあって、高齢者の研究に興味を持ちました。私は三世代にも興味をもっていますが、専門は高齢者です。 

 

⑤最近の社会問題で気になるテーマを教えてください。

 

最近の社会問題で気になっているのは、少子化です。子どもに対する考え方が昔と今でとても違うように思います。昔に比べると今の時代は、子どもが迷惑とか、子育てが難しいとか思っている人が多くなったように思います。しかし、私の時代は子どもを持つことは当たり前でした。もちろん、お金のことも考えませんでした。結婚をして、子どもを産んで、子育てをするということは当たり前のことでした。しかし、今は変わってしまったと感じています。

 

⑥オススメの本を教えてください

 

私の「高齢者のカウンセリングとケアマネージメント(The Delicate Balance)」という本です。カウンセリングとケアマネージメントのバランスの話が書いてあります。この本は、ミシガン大学で私が経験したことを書きました。 心理学とは違いますが、小説がとても好きです。Dorothy Sayers・Evelyn Wauqhなど、イギリスのミステリー小説作家が好きです。少し昔の作家で、1990年ぐらいに活躍した人の作品が好きでよく読んでいます。小説の中には心の動きがあり、そこからいろんなことを知ることができます。私は複雑な関係にとても興味があります。それを知るためには小説のほうがいいです。小説だと、家族関係がとても良くわかります。

 

⑦家族心理学・家族療法を学ぼうとしている学生や関心を持たれている方に一言お願いします。

 

いろんな人とたくさん話をすることが大切だと思います。固まらないことが大事です。インタビューは細かいことは決めないでオープンにして、とにかく人々とたくさん話し、そして聞くことが大切です。

 

どんなことを聞くか、あまり決めないで聞くのですか?

 

もちろん質問はある程度決めてありますが、私は他のこともたくさん話します。インタビューは相手のペースに合わせて、ゆっくり話を聞くことが大切だと思います。

 

老研でやってる調査は、ストラクチャードなインタビューと、オープンエンデットな調査がありますが、2つのインタビューについてどう思われますか?

 

両方大切ですし、聞きたいことにあわせて2つをうまく使うのがいいと思います。ストラクチャードの質問は、必要なことを簡潔に聞ける方法であると思いますが、ストラクチャードの質問はイエス50%、ノー50%な部分があって、どうしてかわからないところが出てきます。そういう場合はオープンエンデッドの方が細かい部分も知ることができると思います。そのような特徴を知り、両方をうまく使うことが大切でしょうね。

 

 

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