家族心理学研究者の第一人者にインタビュー

?
  
ookawaramii             
 東京学芸大学 教育心理学講座助教授 大河原美以先生
(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)
            インタビュアー 「家族心理.com」スタッフ池亀真司
 
 

********************************************
①先生の御領域/ご研究のテーマをわかりやすく教えてください。

専門領域は、子どもの心理療法と家族療法です。現実に起こっている『問題』を解決するために、個人療法と家族療法・学校へのシステムズアプローチを統合して、効果的な援助を実践していくということをめざしています。特にトラウマの治療と社会構成主義の考え方を統合した臨床実践を展開しているところに、特徴があるかもしれません。また、カウンセラーの養成、教育にも多くの時間を費やしています。

②どのような問題意識から活動/研究をしていらっしゃるのですか。

私は大学を卒業してすぐ、児童福祉施設の児童指導員として働いていました。そこで不登校や心身症の子どもたちと出会い、たくさんのとても貴重な体験をしました。そこで、より専門的に学ぶ必要性を実感して、大学院に進学し、その後非常勤のカウンセラーをへて、平成9年より東京学芸大学に赴任しました。ですから、私の問題意識は常に現場にあり、現場に役立つこと、現実に解決すること、そのための実践と研究を行っています。ここ数年は、学校現場のニーズとして、きれる子、怒りをコントロールできない子への対応に困惑している状況があるので、子どもたちの感情の育ちと支援に力をいれています。 

③先生の師は誰ですか。また影響を受けた人物を教えてください。

私の臨床の基本にあるのは、グレゴリー・ベイトソンです。そして、そのグレゴリー・ベイトソンの著作との出会いは、元国立小児病院医長の崎尾英子先生との出会いから生まれたものでした。崎尾英子先生には、スティーブン・ギリガン、EMDRとの出会いもいただきました。今ではそれらのものが、統合されて私の臨床実践の核になっていると思います。崎尾英子先生はお亡くなりになりましたが、臨床家としての私の中に、多くのものを残してくださいました。

④オススメの本を教えてください。

「ちゃんと泣ける子に育てよう 親には子どもの感情を育てる義務がある 河出書房新社 」これは、子育て中の親ごさん向けに書いたものです。それから、「怒りをコントロールできない子の理解と援助 教師と親のかかわり 金子書房」こちらは、小学校の先生のために書いたものです。いずれも、いま小中学校で起こっている切実な問題に対応するために書いたものですので、子どもの臨床に関わる方たちにぜひお読みいただきたいと思っています。

⑤最後に、これから家族療法を学ぼうとしている学生の皆さんに一言お願いします。

頭でっかちにならないでいられることってすごく重要だと感じています。臨床を学ぶためには、身体感覚として自分の感情と、相手の感情をともに感じていられるという身体性があって、はじめて成立するものだということを、カウンセラー教育に携わる中で、切に感じています。その身体感覚を大事にすることができると、感情に対するセンサーをさびつかせないでいられるのではないかと思います。知識はたくさんあっても、感情に対するセンサーがさびてしまっていると、援助関係が成立しませんし、知識と技法で他者を援助したいと思う気持ちが、他者より優位になりたいという無意識の願望であったりするので、自分の感情をみつめるということを大切にしてもらいたいと思っています。これは、家族療法に限ったことではなく、臨床の基本なのですが、特に家族療法やブリーフセラピーはその技法に魅力・特徴があるので、あえて、強調したいと思います。

大学院紹介

東京学芸大学教育学研究科学校心理専攻臨床心理コースでは、現場で役立つ力のある臨床家・実践家を育てることをめざしています。修士課程のみの大学院ですですから、研究者を目指す方にはむいていないと思います。私は、大学院教育においては、臨床の基本の力、クライエントの痛み・苦しみをしっかり受け止め、持ちこたえる力を身につけさせることに力を入れています。学生さんは実習を通して、この基本がそうたやすく身につくものではない現実を知り、その自分を受け入れることから学びが始まることでしょう。2年間の教育を経て、カウンセラーとしての身体性を身につけてもらいます。「あなたと話すと安心する」といわれうる力です。このことを教育の目標としているところが、私の研究室の特徴だと思います。プロの身体性をもったカウンセラーになりたい人、自分の力量の向上に情熱をもっている人には、むいていますが、あんまり苦労しないで要領よくカウンセラーになりたい人には、むいていません。院生は、これらの基本を身につけながら、子どもたちへの治療と家族療法、学校へのコンサルテーションの実際を体験し、スクールカウンセラーとしての統合的な即戦力を得て、卒業していきます。子どもたちのためのプロのカウンセラーになりたいと思っている意欲のある学生さんをお待ちしています。

Copyright © 2017 家族心理.com. All Rights Reserved.
Joomla! is Free Software released under the GNU General Public License.