【家族心理学研究者の第一人者にインタビュー】

sabine-thoburn

 

University of Munich

Sabine Walper

Seattle Pacific University

John W. Thoburn

sabine thoburn

 

 

 

インタビュアー 下川恵

青木素子

Phoebe Ofei-Manu

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

2013年8月31日 第7回国際家族心理学会にてインタビュー

 


 

Q,日本の学会の感想、どうでしたか?

A、サビーネ

まず、日本にはたくさんの心理学者がいて素晴らしいと感じました。ドイツも日本のようにたくさんの研究者たちがいるので、開けた心理学になっていくように願いたくなりました。

アメリカにはAPA、日本には家族心理学会があるけど、ドイツには、「家族心理学」という分野やその学術会議がまだきちんと確立していません。今回日本に来て、同じフィールドの心理学者たちと出会えて、お互いの情報交換が出来たことはとても嬉しいし、感激しました。

今、家族の在り方が変化してきていると私は思います。私のテーマは家族の変化についてです。それについて多くのことに取り組んでいるけれど、なかでもたくさんの人々に関係する、日本でもドイツでもそのほかの国でも起きている問題を扱っています。特に日本とドイツは家族について似ているところがあります。たとえば離婚率の高さ。あとは、ほとんどの家庭が最も伝統的な家族の在り方になっていること、つまり夫が外に出てお金を稼いで、妻が家事をやって子供を育てるということです。だんだんと家族の在り方はそれだけじゃなくなってはいるけれども、まだほとんどの家族の在り方にそういう伝統が残っています。それもこれからすごく変わっていくんじゃないかと思っています。

A、ソボーン

まず僕は、芸術的だから感じたことから話すよ(笑)。昨日の夜気付いたことなんだ。僕の中にはたくさんのドアがある。そのドアのひとつにずっと前から気づいていて、でもずっと開けられなかったドアがあったんだ。けれどもある日、開けることに挑んでみた。そのドアの先を歩いてみると、そこにはとても美しい庭が広がっていたんだよ。これまで気付けなかったけれど、日本の学会を見て、参加して、こんなにも素晴らしい様々なアイデアがあるということに気付けて感激しているよ。そして日本に来たことで得られた新しい人たちとの出会いが、そのドアに導いてくれたんだ。ここに来て本当に良かった。

いくつか考えたんだ、西洋と東洋の違いについて。日本の研究は簡単に現場で実行できるようになっていることが素晴らしい。アメリカでもいくつかの研究はそうだけれど、実際の現場で有効なものはまだそれほどではないんだよ。他にもよく思うのは、例えば日本は他の国、特に西洋と違って、研究者たちがとても友好的であること。科学者である一方で、とても明るく、すごくオープンで話しやすいんだ。アメリカにももちろんそういう人もいるかもしれないけれど、どうしても気持ちが専門的になってしまう、心理学者の中でもそれぞれの分野を強く出しているから、それぞれの間にとても溝があるんだ。自分の専門を重視しているから、だんだんと人間的な感情が薄れていってしまうじゃないだろうか。

Q,心理学の中でも日本の家族心理学に傾倒している人たちは、どちらかというとアクティブで元気な人が多いんですが、西洋でもそうなのでしょうか?

A、ソボーン

そうだね。っていうかそうでなくてはこの道で働いていくのはとても大変だ。何故かって、個人はもちろん、個人と個人、個人と二人、三人、集団、カップルや家族を扱っていくのであれば、明るくなくてはならないし、とても行動的である必要があるよ。関係性を扱っていくということは、とても大変なことだからね。

A、サビーネ

そうね、私も同感です。心理学の専門家は人々の関係性を導いていくのだから、私たち自身が人や人と関係を築くことに興味がある必要があります。

A、ソボーン

それとね、心理学者は元来探究心旺盛なんだ。探究心を持つことはいいセラピストとしてのサインでもある。例えば自然に人を理解していこうとするし、自然に自分を磨こうとしていく。そして、科学者としてたくさん疑問を持ち続けていかなければならない。小さい疑問、大きい疑問、たくさんの疑問を研究してこそ、心理学者は科学者としても在りうるんだ。

Qこの領域に興味を持ったきっかけは?

A、サビーネ

すごくいい質問ですね。この領域にきっかけを持ったひとつが、私が大家族で、いつも家族をみてきたこと。そして家族と関わるのが大好きで、それがきっかけで大学ではずっと家族心理学の勉強していました。いつも家族の誰かに何か起こっていて、家族の行動をみていました。またその時に、カウンセリングのトレーニングとして、家族療法はもちろん、行動療法や来談者中心療法、論理療法などいろいろな療法を学びました。それは今でも本当にすごく役に立っています。私は6人兄弟で、今は一緒には住んでないけれど、年に一度、いろんなところに住んでいる親戚一同が集まります。その時は90人にもなるのです。

インタビュアー

(一同驚き)部屋に入りきるんですか!?

サビーネ

NO!(一同爆笑)私の親戚の一人が建築家で、家族全員で集まれるような大きいセンターを作ったから、そこにみんなで集まるのよ。

A、ソボーン

人間関係の心理学を学ぼうとしたきっかけは僕が双子だったからなんだ。(一同仰天)母親のお腹にいたときから、つまり生まれる前から、僕は人間関係を始めてたんだよ。そして大学生の時に歴史の勉強をしていて、宗教や歴史などいろんなことを学んでいくうちに大きな疑問が湧いてきた。学部最後の年に、過去について勉強して、過去の出来事がどのように今、そして未来に影響を与えていくのかに興味を持ってね。その後、家族心理学を学んでいるときに、人は何を考えているのかについて更に興味を持ったんだ。そのころ、ほとんどの心理学が個人個人を切り離して考えていた中で、家族心理学はシステムとして、集団や状況、人と人とを扱っていて、僕にはとても好ましい心理学に思えたんだよ。

Q.両親の離婚による子供への影響について、どのようなものがあげられますか?

A、サビーネ

ベルギーでは離婚した際に、弁護士の管理の下、子供たちはそれぞれの親の家の間を平等に泊りにいかなくてはならなくなります。それは親が楽だけれど、子どもが大変なことなのです。たとえば片方の親がいる方の学校に行っていたら、そうでない親の家に泊まりに行く時、次の日が学校なら、学校の道具ごと泊まる家に持ってかなきゃいけない。往復そのものがすごく大変だし、それだけでもストレスになる。でも子どもたちがその方がいいというの。その方が親も喧嘩しないで済むし、喧嘩をしてほしくないからそれで平穏が保てるなら、それが一番いいと思って、それしかないから子供たちは自分を犠牲にする事態がおきます。

A、ソボーン

まさにその通りだ。また、離婚した親たちが離れていると、二つの私生活があることになる。二つの学校、二つの生活、二つの友達を持つことになるんだよ。親が近いところに住んでいればいいが、遠いところだと行き来するのも大変だし、私生活にも支障が出てしまう。

A、サビーネ

日本のように、子供の場を一つの場所に決めざるを得ない場合もあります。だから子どものために両親同士は近くに住むという場合もあるわ。そうやって親同士は近くに住みたくないけれども、なるべく近いところに住んで、子どもに負担をかけないようにする親もいれば、そんな簡単には行かなくて、やっぱり離れて暮らす両親の間を行き来するしかない子もいます。

Qおすすめの本を教えてください。

A、ソボーン

『General theory of  love』Amini Lewis

この本はとても内容が良く、そして美しい。この本の中には、国境のないとても普遍的なテーマが書かれているんだ。

『Object Relations and the Developing self』Althea Horner

A、サビーネ

『Children of the great depression』Jleu Ecder(独)

Qどのような問題意識から活動、研究をしていらっしゃるのですか?

A、サビーネ

まず私が関心を持っているのは、離婚した親や家族、再婚した家族について。特に私は離婚した家族について深く掘り下げています。これは本当にたくさんの国で、たくさんの家族に当てはまることでしょう。離婚といっても彼らには様々な状況があるから、私は友人たちと今、聞き込みの調査を行っています。

明らかになったのは離婚後は、どうしても子どもに対しての教育がだんだんないがしろになっていくということ。アメリカは学校と家族と協力し合って子どものために支援していく制度が整っているようね。でもドイツはというと、今はまだ学校は学校、家族は家族で個別に動いています。けれどこれからは、連携を取って子供のためにそういった支援を確立しなくてはならないと、私は思っています。

例えば離婚した家族は大抵貧しくなるから、生活が苦しくて家の中も暗くなって会話がなくなってしまう。こういうことで子どもの性格は変わっていくし、家にも寄り付かなくなっていく。学校に行くのも大変だし、家に帰ると嫌な気持ちになる。だから学校と家族が連携して、子どもたちを助けていかなければならない。

連携は大事だし、それを始めるには学校側も中学校や高校からじゃなくて、幼稚園から、小さい頃からやった方が、もっともっと教育のレベルが上がってくるし、とにかく早く取り組んだほうがいい。例えば幼稚園、保育園の段階で、医療機関や複数の教育機関を交えて、教育センターを中心に連携を取っていく。そうして早い段階から家族全体に教育していく必要があるでしょう。

A、ソボーン

「『誰か』がサポートする」という考えでは、サポートしていくことは難しい。子供たちがサポートなしで育っていくのは簡単じゃない。子どもの将来に関わることだから、迅速でミスなく介入していくためには、行政が対策をとって、子供の状態を全員で把握している必要があるよね。全員で連携していくことは子供たちにとって本当にいいことなんだ。

Q.こういった連携をサポートするコーディネーターはいるんですか?

A、サビーネ

今はまだ教育的な面でサポートする役割があるくらいなの。今私たちは、子供たちがとても小さいうちから、教育はもちろん、生活面でのサポートも受けられるようにしたいと取り組んでいるところよ。そしてコーディネーターを中心として、様々な機関と連携して、家族全体への教育をしていくべきよね。

A、ソボーン

アメリカの場合も、どうしても家族と学校が連携してないところが多いんだ。何故ならほとんど親がやるべきことを学校がやっていて、学校に任せになっている。だから親が放置をしているような状態で、それがすごく問題になっている。僕の妻は学校の先生なんだけど、親が協力してくれない、どうしようといつも嘆いていて、学校だけじゃなくて、小さいことでもいいから親たちが子どもを手離さない方法だったりとか、コミュニケーションを含めたコーディネーターみたいなのが必要なんじゃないかな。

Q.あなたの師匠、影響を受けた人物は?名前も教えて下さい。

A、サビーネ

Klaus A. Schneewind

アイズ先生はドイツ人の心理学者で、家族と経済について、経済が変わっていく中で家族がどういう風に変わっていくかのかについての研究をしています。私はその本を読んで興味を持ちました。うつについても研究している方で、私が博士課程の時はちょうど、就職できない、仕事のない人たちが増加していて、アイズ先生の本をアメリカで買って、先生の本を元に研究を行いました。アイズ先生が特に重視していた点は、人間はなぜ目標をもつのか、またそれは何なのか、どのようにそのゴールに向かっていくのかということについて、です。

Rainer K. Silbereisen

この先生は私のアドバイザーで、ドイツではすごく有名な家族心理学の先生です。IAFPの副創設者でもあります。

Aソボーン

師匠 Dennie Guernsey

彼は僕の良き指導者で、いろんな助けになってくれたんだ。僕が若い頃、心理学を勉強していると彼は言ったんだ、「哲学者なのか心理学者なのかよくわからないやつがいるが、お前はそういう心理学者になるな」と言っていたよ。彼は家族療法家としていろんなことをやっていたし、僕の心理療法家としてのアドバイザーもあったんだよ。僕が心理学を勉強し始めたころ、彼はウガンダ戦争後の精神的なケアをやっていて、彼のもとで戦争後のメンタルケアや災害心理学を学んだんだ。

大学院時代の先生 Flrenee Kaslan

彼もIAFPの創設者ですごく有名だよ。彼はいつもいつも色んな事に関心を寄せていて、僕は彼のそういう姿勢にとてもインスパイアされたんだ。

Q.これから心理学を学ぼうとしている学生たちに一言

A、サビーネ

私は、家族心理学は全て「チャレンジ」と「チェンジ」だと思います。

その意味は、良い専門的なサポートをするには、基本的な社会やコミュニティ、国について見続けていく必要があるということ。そしてたくさんの苦しんでいる家族、日本だけじゃなくて、他にも色んな国のたくさんの苦しんでいる家族のために、心理学者になりたい人たちは、辛いこともあるし、どうしていいかわからないこともあるかもしれないけど頑張ってください。

A、ソボーン

これまでの心理学にはいくつかの異なる分野があるが、中でも優れた大きな流派が3つ存在しているんだ。まずは精神分析、2つめは認知行動心理学、そして最後に人間性心理学だ。今起きていること、これから起きるであろうこと、そして増加していくこととして考えられるのは、大きな新しいコミュニケーション手段として、人と人との関わりにネットワークが入り込んでくるということだ。すると人はウェブだけで、これは何か?これは何なのか?もっともっととより知識を蓄えていくだろう。そして心理学の次の段階のアプローチのひとつに、ウェブを通したシステムズアプローチ、また家族心理学をどのようにやっていくかがテーマとなってくるんじゃないだろうか。

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