■家族心理学・家族療法に関する特集を掲載します。


2016年度 注目学会情報

 

 1.2015年 第8回 日本ブリーフセラピー協会 学術会議 IN宇都宮 

 2.第33回日本家族心理学会

 


大会レポート

Solution Focused Brief Therapy Association 2015

首都大学東京大学院 人文科学研究科

人間科学専攻 心理学教室 博士後期課程

井上 智博

 

SFBTA2015に参加してきました。初めてアメリカ本土にわたり、緊張もありましたがSFBTについての勉強という意味でも、自分の臨床実践・研究・勉強について問い直す、とても有意義な時間でした。

 初日の午後は、Pulling It Together: Using Levels of Learning as Solution Focused Trainer/Consultantのワークショップに参加しました。日本のワークショップとは異なり、教育においてやっていることについてフロアから上げてもらうというフロア参加形式で行われました。それらを元に「Conceptual」「Perceptual」「Executive」「Self-awareness」の4つの水準から説明されていました。言語的にディスカッションは大変でしたが、アウトプットしていくことが、SFBTのトレーニングや教育において大切なことだと感じました。

 また、若島先生・生田先生が日本におけるブリーフセラピーの実践と研究について発表されていました。発表前に台湾のSFBTについても紹介があり、文化的な違いについての質問が多く出ていました。実践家が多いSFBTAではシステム論からの説明には馴染まない様子も見受けられましたが、生田先生の「Day and Night」という説明が参加者にフィットしたようで、多くの方がうなずいていました。その後、話した方にも日本のSFBTについてもっと知りたいという声があったため、来年以降自分も説明できるよう勉強を重ねていきたいと思いました。

 番外編では、様々な先生方に話をうかがうことができました。まず、ピーター・ディヤング先生にお会いすることができました。SFBTの第一人者である先生は、近年マイクロアナリシスリサーチを中心に研究されています。SFBTは「What is your hope?」という言葉で全ての鍵を開けられる万能鍵であると説明してくれました。最も重要なのは「クライエントがどのようなニーズを持っているのか」、クライエントに関心を向け、クライエントの役に立てるようなプロセスに関心を向けるといったことを語ってくれました。セラピストの中で考えてしまったり、コミュニケーションでのやりとりに考えが向いてしまうのではなく、「What is your hope?」という最も基本的なことについてもう一度自分に問い直させられた感じがありました。

 次に、ヘザー先生にもお話をうかがいました。ヘザー先生は解決志向をオリエンテーションとするトレーナーおよびスーパーバイザーです。その中でも、自殺に対するSFBTの実践は有名で、実績を残しています。今回のインタビューでは、アメリカに対する自殺対策について語ってくれました。その中で特に「死の恐怖」についてクライエントと話すことが大切であるという部分が印象に残りました。

 今回の大会全体を通じて、勉強や実践、研究に対するモチベーションになりました。SFBTだけではなく、ブリーフセラピーについてもっと知りたいと思いましたし、また自分が得たものをいかにアウトプットしていくのかを自分に問い続けていきたいと思いました。また、自分自身を見つめるきっかけにもなりました。これから自分がどうなりたいのか、そしてその最初のスモールステップとして何ができるのか…それらを考えながら勉強・実践・研究に取り組んでいきたいと思いました。また、言葉の壁は大きいなと感じたので、次回参加に向けて英語についても頑張っていこうと思いました。

 

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 日本家族心理学会第32回大会

テーマ:これからの家族のかたちと地域のかたちー人・家族・地域のつながりを求めてー 

 

***大会報告***

齋藤かほ(神奈川県立保健福祉大学研究助手)

718日~20日、山形大学・山形テルサで開催された第32回日本家族心理学会に参加してきました。大会のテーマは「これからの家族のかたちと地域のかたちー家族と地域のつながりを求めてー」でした。

 特に印象に残っているのは、大会3日目の小説家・柴崎友香先生、東北大学教授・長谷川啓三先生、神奈川県立保健福祉大学・生田倫子先生の対談を聞かせていただきました。第1部のテーマは「文学から見る現代家族」、第2部のテーマは「夫婦善哉-をんなとおとこは幸せの要か?」でした。

 柴崎先生の小説に描かれる男性観・女性観から話が始まりましたが、生物学的な男性・女性の役割の話や時代の変化について話が広がっていきました。途中、長谷川先生の家族関係についての話も飛び出し、笑いにつつまれる場面もありました。

 時代が変化する中で、家族形態はもちろん性のあり方もともに変化していきます。家族の中でご飯を食べるにしても、女性が結婚して子育て・仕事をするにしても、現状とともに私達の考え方や価値観、捉え方もどんどん変化していきます。その中で私達、臨床家は常に自分自身の考え方や価値観、捉え方に敏感にならなければいけません。その上で、目の前にいるクライエントのシステムや情報の連鎖に目を向けていかなければならないと改めて実感しました。

 また、長谷川先生に対する柴崎先生、生田先生の掛け合いが絶妙で、会場に笑いが絶えませんでした。何か見ているこっちが「ここまで話していいのかな?」と思わず心配になる場面もありましたが()、長谷川先生も楽しそうにお話されていました。長谷川先生が教え子である生田先生を信頼しているようにも感じました。真面目な話をしているんだけれども、どこかシュールで面白い!気付いたらあっという間に時間がたっていました。これも他の心理学派にはない家族療法の特徴を表しているのかなとも思いました。 

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Family Collaboration against Global Crisis 多発する危機と家族の絆

講師: Luciano L'Abate (Ph.D., Professor Emeritus of Psychology at Georgia State University)
座長: 亀口憲治(国際医療福祉大学大学院・東京大学名誉教授)

  • 森川夏乃 東北大学大学院教育学研究科
      • 今回の学会は国際学会ということもあり,最新の家族心理学に触れることのできる大変貴重な機会となりました。特に印象的だったのは,ラバーテ博士の講演です。確かな理論に基づき,一定の成果を出すことのできるカウンセリングの推奨には,ラバーテ博士の非常に理論的でここまで蓄積してきた知見の豊富さを感じました。繰り返し「artist」ではいけない,とおっしゃっておられました。
        自分自身の面接姿勢を振り返り、「なんとなく」の部分が多くなっていないのか考えました。臨床心理士としてクライエントに向き合う以上は、クライエントにとって有益なカウンセリングサービスを提供していかなくてはいけない、という自覚を持つ必要があることを再認識しました。「心理」は直接的に目に見えないだけにこのことに甘くなりがちですが、自身のカウンセリングをあいまいにしないためにも効果測定をして自分のカウンセリングについてフィードバックをもらうことは日本の臨床現場にも必要であるように感じました。
        今回の学会で,ラバーテ博士からカウンセリングへの姿勢を感じ取り,また研究発表を通じて家族心理学への知識を深めたものだと思います。今一度,自身のカウンセリングについて振り返し,「なんとなく」になっていないか確認してみたいと思いました。
        何よりも80歳を超えてもなお、勢いのある研究をされ、溌剌と壇上に立って講演されている博士の姿にもっとも刺激を受けました。
  • 富永紀子 東北大学大学院教育学研究科
      • 大会記念講演L’Abate先生の講演ということで、大変楽しみにしておりました。L’abate先生の講演の中で最も強く残ったことは、「オンラインでの介入の発展は必然」で、それは「Thが選ぶのではない」ということです。社会の要請からオフラインでは足りず、オンラインが必然であるということは、大変インパクトがありました。また、「カウンセラーに必要な10の決断」として、「我々がしないで、誰がするのか?」という視点を意識しているともおっしゃっていました。この問いは今後の様々な活動で、迷いを感じたときの1つの指針となると思います。
  • 張新荷 東北大学大学院教育学研究科
      • L’ Abate先生の発表では、主に二つのことが強調されました。一つは、カウンセラーはクライエントと対面して直接話すことなく、遠距離間での記述やホームワーク課題を通して援助することを学ばねばならないこと、もう一つは、カウンセラーは追試のできる標準的な実践手順を用いて活動し、そして効果評価する必要があること。この二点について自分の考えを述べてみます。
        近年、インターネットを活用する援助のあり方が議論されたり、現場において、SKYPEなどのチャットソフトを利用してカウンセリングを行うことを聞いたことがあります。我々カウンセラーは面接の枠を改めて考え、いろいろな資源を活用しながら、クライエントそれぞれのニーズや状況に合わせ多様なサービスを提供できたらと思います。留学生としての自分は在日中国人の状況から考えてみたら、まず経済的状況やソーシャルサポートなどに関して差があるが、大部分の人はカウンセリングのためにお金をかける余裕がないと思います。また、相談したくても、身近に母国語で相談できるカウンセラーがいないため、相談する気にならないことも考えられます。そこで、カウンセラーとしての私はインターネットを利用し在日中国人の援助を行う可能性が考えられます。その実行のため、まだまだ課題が多くあると思うが、一応オンラインを視野に入れて考えてみたいと思います。
        最近、認知行動療法が世界中に広く使われていると感じ、この結果に至るのは、認知行動療法が実証性にこだわるアプローチであり、「共通言語」「客観的に記述」などを重視し、再現性を持たせやすく、エビデンスの量が多いことが大きいと思いました。ユーザーとしてのクライエントのために、オンラインによる介入の有効性や私たちがすでに行っているカウンセリングの有効性などを証明することがとても大切だとわかりました。またカウンセリングを勉強している人のために、操作性があり再現できる手法の提示がとても役に立つと思います。
  • 今久留主舞衣 鹿児島純心女子大学大学院
      • ラバーテは大会記念講演において、オンラインによる介入の仕方やライティングという新しい技術について紹介をしていた。ライティングという技術について初めて聞いたときは、インパクトが非常に大きく、講演冒頭でラバーテが話していた「自分たちが変わる必要性」について考えさせられた。ライティングにおいて重要となってくるワークブックの詳細についてもっと知りたいと感じ、今後どのように発展していくのか気になる内容であった。企画シンポジウムであるSFAの展開―導入から震災への活用まで―では、悪循環や良循環はクライエントに常に備わっており、クライエントの力に目を向け信頼することが大切であることや、例外の大切さなどSFAについて改めて学ぶことができた。今回の学会を通して、海外の最先端の情報や様々な研究について知ることができ非常に勉強になった。
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    諸外国/大災害と家族・コラボレーションとプリベンション

    司会:生田倫子(神奈川県立保健福祉大学) シンポジスト: 遊永恒(四川師範大学) Sekar Kasi(National Institute of Mental Health and Neuroscience) John W. Thoburn (Seattle Pacific University) 若島孔文(東北大学)

  • 兪 幜蘭 東北大学大学院教育学研究科
      • 今回の学会は国際家族心理学会ということもあり、海外の家族研究の動向などに関しても聞くことができました。「多発する危機と家族の絆」というテーマに即して、多様なシンポジウムと議論は行われました。
         企画シンポジウム『諸外国/大災害と家族・コラボレーションとプリベンション』では、中国師範大学の遊永恒先生、National Institute of Mental and NeuroscienceのSekar Kasi先生、Seattle Pacific UniversityのJohn W. Thoburn先生、東北大学の若島孔文先生から災害後の支援に関してお話をいただきました。
        中国の四川大震災被災者への支援では心理支援センターの設立など、個人への支援の動きもありますが、家族への支援としては、被災によって子どもを失った家族に再び子どもをもつように政府から推奨されることが報告されましたが、それは中国の一人っ子政策との関連がある支援策でした。インドでは、たくさんの自然災害を経験していますが、その中で家族支援は災害時だけでなく、そのあとの長い期間にかけて行われ、そういった観点を考慮した災害支援プログラムを示さなければなりません。
         私も東北大学支援グループのメンバーとして、今までの活動とこれからの活動に関して再考するきっかけとなりました。また、視野を広げて国際的な被災支援と考える際には、それぞれの文化に即した支援が必要であること、また、家族ひいてはコミュニティへの支援の有効性に再び気づくことができました。
         最後になりましたが、今学会を運営してくださった先生方、スタッフの方に、心より感謝申し上げます。たくさんの学びと刺激を頂きました。
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    事例発表・自主シンポジウム

    事例発表・度重なる家族の喪失を抱える成人女性との心理療法過程-多世代を通した家族関係理解による検討-
  • 富永紀子 東北大学大学院教育学研究科
      • 事例内容は、買い物依存行動などの衝動的な問題にまつわるものでした。買い物依存症は、多重債権による生活維持困難等により家族全体を巻き込む問題行動ですが、心理療法でどう扱うかを詳細に検討したものをみたことがなかったため、興味深いテーマであったこともあり参加させて頂きましたが、着いたときには会場はほぼ満席という状況でした。この事例は驚くほど複雑に絡み合った家族関係が背景にあったものでしたが、高橋先生のどんなことをされても根負けしない辛抱強さと対応の丁寧さによって解決したことが発表の随所で感じられました。その姿勢は臨床家として素晴らしく、参考にさせて頂きたいと思います。また、オリエンテーションが精神分析である高橋先生と座長の平木先生とのやりとりによって大変盛り上がりました。特に医師との関係や、問題行動が改善してからの家族の様子についての平木先生のご指摘は、勉強になりました。1時間半という時間があっという間でした。
  • 自主シンポ・日本における境界性パーソナリティ障害などの感情調節困難に対する家族研究とその実践 松野航大・遊佐安一郎・須川聡子
  • 富永紀子 東北大学大学院教育学研究科
      • まず、BPD(境界性パーソナリティ障害)の治療には家族の参加が重要であり、家族の困難感に寄り添いながら支援する、そのプログラムの必要性と実践のエビデンスの必要性が、松野先生の熱意ある発表から感じられました。遊佐先生は、「共感」ではなく「承認」という言葉を用いて、家族支援を説明していました。遊佐先生はBDT(感情調節困難)の家族支援として家族スキルアップグループを実際に行っているということでしたが、その家族の多数が2年以上継続されているということで、ドロップアウト率の低さに驚きました。須川先生もBDTの家族グループの実践を行っているということで、その様子を非常に具体的に、エビデンスを同時に提示しながら丁寧に説明して下さいました。各シンポジウムの方々の発表は工夫されており、大変勉強になりました。シンポジウムの3つの講演を通して、研究から実践という繋がりがよく分かり、視野が広がりました。
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    [2012年 特集]

    *2012年日本ブリーフセラピー協会第4回学術会議in横浜
    「ブリーフセラピー 文明開化とオリエンタリズム」

    1. 東京成徳大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻 青木素子
    2. 龍谷大学大学院 狩野真理
    3. 青梅市役所 谷田部正美

     


    レポート01 青木素子
    東京成徳大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻

    ○「ブリーフセラピー、実に面白い…!」

    ブリーフセラピー初学者の私にとっては解ってないことも多々あっただろうとは思いますが、むしろ単純な感想しか出ないほど、インパクト十分の内容でした。

    午前は『B-1 Grand Prix』、午後には『3人のファミリーセラピストによるデモンストレーション』と、盛りだくさんの内容。そしてこのどちらの企画も別室からの、なんと、生放送でのお送り!!

    『B-1 Grand Prix』では、全国で開催されている短期療法学ぶ会より、仙台支部、横浜支部、銀座サロンの3支部からそれぞれ2人ずつブリーフセラピストの方々が参戦!同じテーマ、クライアント役でのデモンストレーション面接です。どの支部も容赦なく、本気で勝ちを狙っている雰囲気の、まさに白熱のブリーフセラピーバトルを拝見することができました。そして初代B1グランプリ優勝支部は、審査委員長の東先生、父親クライアント役の方、お二人からご指名を受けた“銀座サロン”!!女性ならではの柔らかく親しみやすい受容的な雰囲気と、隙のない的確なコンプリメントの数々が大変印象的な面接でした!

    『3人のファミリーセラピストによるデモンストレーション』では、東豊先生、水谷久康先生、若島孔文先生による、実際のケースをもとにした、匠のデモンストレーション面接を拝見することができました!短い時間設定の中で、流れるように進んでいくセラピーは壮観です。一瞬一瞬に詰まったブリーフセラピーの技巧はもちろんのこと、匠それぞれの個性が際立った、高いパフォーマンス力にも驚きの面接でした。面接の内容は三者三様でしたが、家族で訪れたという設定を十分に生かされていたところ、またピンポイントを抑えているからこその非常に早い展開は共通していたように思います。その場で見たときにはあっという間過ぎて、劇的な流れにただただ圧倒されてしまいました。難しいケースをその場の的確な判断によって、どんどん解決に導いていくことは、セラピストの一つ一つの言動に意味が詰め込まれてなければできない、これぞ匠のなせる面接!といった感じでした。

    ブリーフセラピー協会学術会議、文明開化とオリエンタリズムが入り混じった見事な学会でした。あまりに新鮮、かつ斬新なこの企画を初めて知ったときのわくわくそのままの内容、ただの学会じゃ収まらない感じがまた面白かったです。ブリーフセラピーは、鮮やかで美しい…!感激の1日でした。

     

     


    レポート02 狩野真理
    龍谷大学大学院

    本学術会議には初めての参加だったのですが、

    スタッフの方、参加者も若い先生方が多く、活気がありました。

    そして、お祭りのようなワクワク感も感じられました。

     

    ・・・というのも、大会1日目午前の部。

    B1グランプリという驚きの企画だったのです!

    午後からのの「3人のセラピスト」も、とても贅沢な企画でした。

    東先生、水谷先生、若島先生という3人のセラピストの匠の技を拝見できました。

    その「匠の技」にも、それぞれの先生方の面接スタイルがあり、

    「それぞれの匠の技」を45分間、拝見できるという、

    とても贅沢な時間を過ごさせていただきました。

     

    学会というと、ちょっと緊張した空気感があるのですが、

    とても居心地のいい空間だったことも印象的でした。

    それは、チームワークのよい運営スタッフの先生方の温かい雰囲気が

    参加者にも伝わってきたのだろうなと感じられました。

    実践的な学びをありがとうございました!

     

     


    レポート03 谷田部正美
    青梅市役所

     

    ○「3人のファミリーセラピストによるデモンストレーション面接」

    今回の学会は初日しか参加できなかったのですが、その初日にNFBT学会で初めての企画が続き、たいへん興味深い有意義な時間を過ごさせていただきました。

    特に印象に残ったのが、東先生、水谷先生、若島先生による、デモンストレーション面接です。

    順番をじゃんけんで決めるなど、和気あいあいとした雰囲気のなか進められました。

    まず、東先生はシステムズアプローチです。悪循環を起こしているパターンを変えるため、今動いてくれるのは誰なのか、家族メンバー一人ひとりに状況や気持ちを聞き、誰かの発言を他のメンバーにあなたもそう思いますか?と確認。そして、動く意思があるかどうか念を押すのがとても印象的でした。

    3人のクライエント役は知っている方だったので、後で個人的に感想を聞いてみたら、父がすごく責められた感じがあって何とかしなくちゃと思った、とおっしゃっていました。見ていて父を責めているという感じはなかったと思うのですが、確実に家族の気持ちに変化があったのだとわかりました。

    水谷先生はSFAアプローチでした。最初に状況を詳しくたずねながら相手をねぎらうことで、ちゃんと話を聞いてもらえるという安心感があると思いました。そして、スケーリングクエスチョンや今より良くなった時の状態をイメージさせる質問をしたうえで、観察課題を出して終了。面接後、家に帰ったら今までとは違う視点で生活できそうで、そのことがシステムを変えるのだろうと思えた面接でした。

    若島先生は、親の前では話せないこと、子の前では話せないことがあるでしょうということで、前半は父母とIPを別々に面接しました。それぞれの面接が終わったらブレークを取り、後半はIPのつらさを軽減するにはどうしたらいいかに焦点を当てていました。誰かを変えることではなく、IPがどれくらい我慢しているかを知るのが大切ということで、課題を出されていました。IPの我慢を知るということは、問題を直接解決するように見えないかもしれないけど、確実に今までのパターンが変わると思いました。

    どの先生もパターンを変えるポイントをきっちりと押さえていらっしゃる、しかも時間もきっちりですばらしかったです。一つでも真似して自分のものにできたらと思いました。

     

     

     

     


    *東日本大震災 支援活動の紹介

    [長町]

      1. 暮らしの相談だより 19
      2. 暮らしの相談だより 20
      3. 暮らしの相談だより 21

      [扇町1丁目]

        1. 暮らしの相談だより 13
        2. 暮らしの相談だより 14
        3. 暮らしの相談だより 15

        [扇町4丁目]

          1. 暮らしの相談だより 12
          2. 暮らしの相談だより 14
          3. 暮らしの相談だより 15

           

          *2012年 家族心理学会第29回大会レポート

          1. 東北大学大学院教育学研究科博士課程後期 森川夏乃
          2. 東京都教育相談センター 喜多見 学
          3. 赤堀正美
          4. 鹿児島純心女子大学大学院 高本愛美
          5. 鹿児島純心女子大学大学院 今久留主舞
          6. 青梅市役所 谷田部正美
          7. 龍谷大学大学院 狩野真理

           


          家族心理学会第29回大会 レポート01
          森川夏乃
          東北大学大学院教育学研究科博士課程後期

          ○はじめに

           2012年7月14(土)から16日(月)の3日間にわたり、東京学芸大学にて日本家族心理学会第29回大会が行われました。この3日間の東京は大変熱く、夏らしい天気でしたが、その気温にも負けないくらいの暑い議論が繰り広げられたのではないでしょうか。研究も臨床もまだまだタマゴの私としては非常に、学びとひらめきとエネルギーをもらった学会でした。
          今年の日本家族心理学第29回大会のテーマは,「家族と感情-人の思いが構成するシステム-」でした。これは、コミュニケーションによって構成されるシステムは,感情を中心に構成されているのではないか,ということを大きなテーマとしており、このテーマに即して、多様な分野からの議論が行われました。
          以下,企画シンポジウム,大会記念講演を中心に今年の家族心理学会について簡単にご報告します。
           
          ○準備委員会企画シンポジム1「「学校への苦情」が構成するシステム-親が子ども愛する思いの中で-」7月15日(日) 13:00~16:00

           このシンポジウムでは、①保護者の心配・願いが「苦情」の表現で伝えられ、②学校側が適切に対応できず、③さらに保護者の心配・願い(苦情)が募る・・・という循環が続くときに構成されるシステムを“苦情システム”と名付け、個人システムと学校システムとをつなぐものとして感情が構成する流動的なシステムに焦点が当てられました。そして、感情に焦点を当てて「物語」を読み直すことが意図されていました。
          さらに一層理解を深めるために、シンポジウム自体が、論理的抽象度の異なる第1部と第2部から構成されていました。まず第1部は、3名の話題提供者の先生と、臨床的視点から2名の先生方によって行われ、そして第2部では理論的な視点から2名の先生方によって討論が行われました。第1部において具体的なプレゼンテーションとディスカッションが行われ、第2部ではそれを受けて理論的なディスカッションが展開されました。

          まず、第1部では、東京都SCの金田桃子先生、長崎県SCの久富香苗先生、東京都SCの平井智子先生から、保護者と学校の相互作用に巻き込まれ、結果としてSCとして上手く機能することができなかった事例について話題提供があり、その事例についてシステム論的な観点から見直すということが行われました。SCは、時にその立場上、教員から保護者対応についてのコンサルテーションを求められる場合と、保護者から学校の対応について相談を受ける場合とが同時に起こってしまうために、『保護者の怒り⇔学校の対応』の相互作用に巻き込まれてしまうと言うことが起こってしまいます。大変な板ばさみ状態です。この板ばさみは、学校現場に限られたことではなく、病院等様々な臨床現場においても生じていると思われます。SCの経験はないものの、非常に他人事とは思えませんでした。


          しかし、システム論的な観点から見ると、どうしてSCがそのような板ばさみになってしまい、学校と保護者の相互作用は持続しエスカレートしていくのかが実にすっきりと、整然と整理されてくるのです。
          保護者は単純に自分の子どもを愛する思いから生じた不安や願いを学校側に伝えるが、学校が受け取るときにそれは“苦情”として受け取られ、保護者が抱いている感情とは異なる意味づけがなされることで、双方のコンテクストにズレが生じてしまっているといえます。そして、このコンテクストがズレたやり取りの循環によって“苦情システム”が構成されてしまいます。
          こうしてシステム論的な観点から見てみると、SCはどのような立場に立っているのか、どうして機能できなくなっているのか、ということが整理されてくるのではないのでしょうか。保護者と学校の相互作用に巻き込まれているSCにとっては、実に、頭を冷やしてくれる見方だと思いました。確かに、保護者は決して学校側をいじめてやろうとして学校を非難しているわけではないし、ただ文句を言いたいわけではないでしょう。多くの親は自分の子どもを愛し、その不安や願いから、学校側に働きかけている、というごく当然の感情と行動です。決して彼らはモンスターなのではないのです。

          そして、3人の先生から出された事例を元に、臨床的な視点からシステムズアプローチ/コミュニケーション・ケアセンターの阪幸江先生、すずきひろこ心理療法研究室の鈴木廣子先生から討論が行われました。さらに、より抽象的な観点から、名古屋市立大学の野村直樹先生と東京学芸大学の野口裕二先生から討論が行われました。
          これらの討論の中で、保護者も学校もそれぞれの正義を通すための行動であり、また、だれの視点でどこを見るかによって、構成された物語は変わってくるということが議論されてしました。しかし、一番忘れてはならないのは子どもの存在であるということを、どの先生も繰り返しおっしゃられていました。
          確かに、保護者も学校もそれぞれの立場から、正義を通すために動いているだけという実にシンプルなものです。しかし、保護者側から見ると、学校とのやり取りは、「理解の足らない学校への戦い」というタイトルをつけることのできる物語だといえるかもしれません。一方で、学校側からすると「保護者との攻防」というようなタイトルをつけることができるのかもしれません。しかし、SCはそのどちらの物語にも関わることができる立場です。坂先生はこのことを「ラッキー」だとおっしゃり、本当に先生の力強さを感じましたし、励まされたような気もしました。SCが一歩、教員システムと保護者の家族システムよりメタな位置に立つことができると、それぞれの間で生じているズレに気付くことができるのです。その位置にたつことができるのは、SCの特権でもあると思いました。

          そして,その議論の後の討論の最後、元現場の先生であった方からのご意見を聞いて、このシンポジウムの中で議論されていたことをスッと飲み込むことができましたその先生は、保護者と学校との関わりは、「学校が困っているんです」と、「学校」を主語に用いると上手く行かないが,「子どもが○○で困っている。一緒に考えましょう」と「子ども」を主語にすると上手くいく、とおっしゃられました。
          つまり、誰を主語にして話すのか、というのは、誰の物語を語るか、ということであると思いました。子どもを主語にして話すということは、保護者も学校も子どもの幸せを願っているという共通の目的を持っているということであり、子どもを中心に据えたシステムであるため、話し手のコンテクストと聞き手のコンテクストに生じるズレも小さいのではないかと思いました。

          このシンポジウムを通して、自らの立場も含め、システミックに見る視点を学びました。SCに関わらず、普段の自分の臨床活動に活かせることも多く、非常に多くの学びが得られた貴重な機会でした。

          ○学会企画シンポジウム「東日本大震災-子どもと家族・災害弱者への支援のあり方を模索する-」7月15日(日) 16:15~18:45

           7月15日で、震災から1年4ヶ月が過ぎます。私としては早かったような気もしますし、一方でまだ1年と少ししか経っていないのかという気もします。1年が経過すると、次第に報道も減り、「東日本大震災」という言葉が人々の話題に上ることも以前よりも減ってきました。
           しかし、実際にはまだまだ震災が残した傷跡はあちこちに残っているのを感じます。心理士として、これからも長くこの大震災という出来事と向き合っていかなくてはならない者にとって、様々な震災支援活動について知ることは、参考になり、刺激を受けると同時に、大変な勇気にもなりました。

           昨年の第28回大会では、大規模な復興に向けて、「想像力」と「創造力」を持って、知恵を出し合い、中長期的な視点で支援を模索していく必要性のあることが確認されましたが、この第29回大会では、震災後1年数ヶ月が経った被災地の現状報告と、自らが被災者でありながらも支援活動を続けておられるシンポジストから、災害弱者への支援のあり方についての提起がありました。

           東北大学大学院の本郷一夫先生、五十嵐小児科の今公弥先生、伊藤矯正歯科クリニックの伊藤智恵先生、文教大学の今野義孝先生の4名の先生方から報告がありました。先生方のそれぞれの報告はここでは書ききれませんが、共通して、普段の真摯な臨床活動の上に、災害という緊急事態に対する活動が成り立っているという点があるのを感じました。普段のネットワーク作りや、普段から築いてきた信頼関係の上に、今の活動が形作られているのだと改めて思いました。また、震災支援においては、活動をしながらどんどんネットワークを増やしていくというフットワークの軽さが非常に重要であることも感じました。そして、今の災害支援によって築かれたものは、さらに今後の臨床活動へと確実につながっていくものであると強く感じた。
           
          また、フロアの先生方の議論を通して、子どもや災害弱者という立場の方、そもそも人間が本来持っている強さについて考えるための、よい機会になりました。今先生のお話しの中で、普段は落ち着かない自閉症の子が、震災時においては、とてもしっかりとしていたという報告がありました。彼らにとっては、震災時の方が、「すること」と「結果」がはっきりしており、わかりやすい環境であったためではないかとおっしゃられていました。とても考えさせられるもので、“弱者”というのは、ある社会システムの中で作られるもので、本質的に“弱者”ということはない、と改めて考えました。
          また、人間が本来持っている力を持たしたちは忘れてはいけないと改めて思いました。議論の中で、そのような人間が本来持っている力は、スピリチュアルなもの(あるいは社会的装置といえるかもしれない)として存在しているかもしれないというご指摘がありました。社会文化的に受けつがれている社会的装置は、社会システム、地域システム、家族システム、個人システムを維持・再生していくための人間の智恵であり、また長い時間をかけてそれを築き上げるのは人間の偉大な力だといえるでしょう。先人達から受け継いだものに学ぶことは非常に多いと思いました。人間が本来持っている力の前で、臨床家が何か“できる”なんていうことはごくごく僅かなのであり、慎ましい姿勢を忘れてはいけないと改めて思いました。

          ○大会記念講演「感情交流としての共感とメカニズム」7月16日(月・祝) 10:00~12:00

           この講演は、私達が普段用いている「共感」について、脳科学的な立場から見ていくというものでした。生物とは縁遠い私でしたが、富山大学大学院の福田正治先生のとてもわかりやすい講演のおかげで、違和感なく、話についていくことができました。
          福田先生によると、感情というのは、まず情動と感情に大きく分かれており、さらに情動は原始的情動と基本的情動に分類することができます。また、感情は社会的感情と知的感情に分類することができます。この情動に分類されたものは、無意識的、自動的に生じるもので、一方で感情は意識的、認知的に生じるということでした。そして、共感は、他人の感情を知ることを意味しており、社会の中で、人と人との関係を維持することに役立っているそうです。

           そして話はさらに、普段私達が馴染んでいる「共感」について、脳科学的な知見からの説明に進んでいきます。霊長類などの高等動物の脳内で、自ら行動するときと、他の個体が行動するのを見ている状態の両方で活動電位を発生させる神経細胞である「ミラーニューロン」の発見によって、共感は心理学から脳科学に移行しました。ミラーニューロンは、他人がしている事を見て、我が事のように感じる共感能力を司っていると考えられており、自閉症やアスペルガー症候群との関連も指摘されているそうです。
           しかし、共感といっても、共感には、「第1の共感」と「第2の共感」とが存在することを強調されました。第1の共感とは、例えば、患者さんが「苦しい」と言っていたことに対して、単純に自分もその苦しみを知り、共感することで、理解や癒しとなるが、第2の共感はさらに、患者さんが私の配慮を理解しているということを私が知っているという状態であり、充実感や満足感につながるというものだそうです。ベテランの看護師さんほど、この第2の共感ができるようになるということでした。

           普段、私達は何気なく「共感」していますが、脳科学的には上記のようなメカニズムであったのかと、単純に驚き、脳内でこのようなことが起こっているのかと新鮮に感じました。また、心理学的な知見から研究されていた事を、側面を変え、脳科学的な知見から見てみることは、驚きと新鮮さがありました。他の側面から見たときに感じる驚きや新鮮さは、そのものに対する理解を深めることにつながり、そのものに対する考え方の幅が広がるように思います。この講演においても、同じように、脳科学的な知見から「共感」を見た驚きと新鮮さは、「共感」に対する理解を深めてくれました。

          ○準備委員会企画シンポジウム2「夫婦の感情とシステム-夫婦はどのようにして危機を乗り越えるのか-」7月16日(月・祝) 14:00~16:30

           今大会最後となるシンポジウムは、東京女子大学の柏木惠子先生、立命館大学の宇都宮博先生、文教大学の布柴靖枝先生、明治学院大学の野末武義先生の4名のシンポジストの先生方と総合心理療法研究所の平木典子先生の指定討論によって盛り上がりを見せました。

           どの先生のお話しも研究と臨床が結びついており、取り入れたいことが多くありましたが、特に印象的であった柏木先生の講演について簡単に紹介します。柏木先生は「夫婦間のコミュニケーションの特徴-何がその危機をもたらしているのか?-」という演題のもと、夫と妻それぞれの言語的および非言語的コミュニケーションの特徴を、社会文化的要因を踏まえて述べられました。
          夫は結婚生活に対して心理的な安定を求めており、配偶者が愛情の中心になっているのに対し、妻は心理的安定につながっておらず、配偶者、子ども、親など大切なものが複数あるということをデータを用いて説明されました。そして、夫と妻では、配偶者の意味が異なっているということを指摘されました。この夫婦間の差異は、夫と妻との結婚満足度の推移の違いとして表れていることが見て取れました。この背景として、夫が従来の女性に対する固定観念を持っているのに対し、女性は社会進出が進み、女性が社会的な地位を得て行くようになったという社会文化的な変化から考えることができるでしょう。
           納得すると同時に、柏木先生のデータから読み取り、それを社会文化的な背景と照らし合わせて考察を深めていかれる鋭さに舌を巻いてしました。今回、柏木先生がお話された内容は、すでに本や論文などで、内容も結果も知っていたものであったにも関わらず、今回の講演を聞き、発想が膨らんだということが、自分自身驚きだったのですが、それは柏木先生の伝え方や考察の鋭さにあったのだと思います。

           さて、少し話しは逸れてしまいましたが、このシンポジウムにおいては、先生方のほとんどが中年期に焦点を当てて議論されておられました。それだけ、中年期とう時期が、transitionの変化が必要になってくる時期であり、関係性が問われてくる重要な時期であることがわかりました。この時に関係が膠着したままであると、様々な危機が生じてしまいます。
          支援者は、そのことを踏まえ、家族の具体的な営みに目を向け、夫婦関係を緻密に読み取っていくことが必要であることを感じました。また,男女では心理療法の捉え方が異なっているという点についても議論がなされましたが、この点は、自分の臨床経験も振り返ってみて、改めてそうだと思いました。この点を専門家が理解していることで、どちらかに肩入れすることなく、それぞれに対して受容的に関わることができていくという点は非常に大切な点であると思いました。
           
          ○さいごに

           最後になってしまいましたが、研究発表と自主シンポについても少し触れさせていただきます。残念ながら、すべての研究発表、自主シンポを見ることはさすがにで叶いませんが、他の研究発表を聞いてきた友人や先輩方との感想・意見の交換が非常に盛り上がったことから、どの発表もとても刺激的なものであったようです。
          学会に参加し、他の研究発表に触れたり、他の先生からご意見を頂くと、普段“家族心理学”を学んでいるつもりでも、知らず知らずにその視点や思考には雑音が入り込んでいたことに、改めて気が付きました。もう一度、自分の視点や理論的背景について再考するには学会という場はとても良い場だと思います。学会でたくさんの研究や議論、ご意見に触れることで、自分の視点や思考をもう一度シンプルな状態にリセットし、リセットするからこそ、新しい知見を吸収し、再構築し、思考をめぐらせ、膨らませていくことができるのだと思います。
           私だけではなく、この学会に来られた方がこのようにたくさんのものを得て帰られたのではないでしょうか。たくさんの先生方が、その吸収したことを臨床・研究の場で活用され、そしてまた次の学会で、他のたくさんの先生方と意見を交わして、臨床・研究がさらに発展していくことを思うと、次がまた楽しみになります。

           最後になりましたが、今学会を運営してくださった学芸大学の先生方、スタッフの方に、心より感謝申し上げます。たくさんの学びと刺激を頂きました。

           

           


           

          家族心理学会第29回大会 レポート02
          喜多見 学
          東京都教育相談センター


          準備委員会企画シンポジウム
          「学校への苦情」が構成するシステム―親が子どもを愛する思いの中で―

           このシンポジウムは、“学校への苦情”という現場で扱いづらい問題を、システムという観点で捉えなおすという企画でした。発表の内容だけでなく、シンポジウムの構造も「話題提供(現場の現象)」―「臨床(臨床の理論的観点)」―「理論(社会学・文化人類学的観点)」と分け、それぞれの先生に異なる論理階型から論じてもらおうという、これぞ家族心理学会のシンポジウムと言うものでした。
           
          始まってみると、「理論」の先生方が揃って「話題提供」の先生に直接質問され、本シンポジウムの仮想論理階型システムは、大きく揺れ動くことになりましたが、それゆえに様々な興味深い視点が提示されていました。

          特に印象深かったのは、学校への苦情を論理階型のシステムという観点で見ることで見えてくる様々な視点です。例えば、「学校と保護者が揉めている状況では、一番に支えられるはずの子どもの存在が、学校システムの中で本来の位置からズラされ、時にはシステムの外に置かれてしまう」という視点は、“学校への苦情”という問題が起こす悪循環を見事に表していました。
          そして、「“苦情システム”という文脈を別のもの、例えば“問題解決システム”と変えて物語る」という視点は、『「学校への苦情」が構成するシステム』というシンポジウム全体の文脈までも変える程の変化を生みだし、家族療法、ブリーフセラピーの面白さ、素晴らしさを改めて提示してくださいました。

          シンポジストの方々の素晴らしさは言うまでもなく、シンポジウムの構造まで練られており、様々な考えを思い巡らせることができる刺激的なシンポジウムでした。
          シンポジストの先生方には、この場をお借りして感謝申し上げます。



          家族心理学会第29回大会 レポート03
          赤堀正美


          今年度の大会テーマは「家族と感情~人の思いが構成するシステム~」である。
           また、昨年に引き続き、東日本大震災後の支援、主に家族の側面から幅広い活動の報告から示唆を呈示する企画が多くあり、大変興味深いプログラムであった。

          ■事例発表

          原発問題により児童を受け入れた家族の支援 -ブリーフセラピーとペアレントトレーニング(行動療法)の併用

           発表者:生田倫子(神奈川県立保健福祉大学)

          本発表はどれほど素晴しい人物であっても、被災者の受入れが長期に及ぶと心理的、身体的ストレスが生じるのは自然であり、そのことへの罪悪感を軽減し、かつ心理的にホールディングすることが継続的支援を支えることにつながることを示唆している。

           電話相談員をしている私の一番驚いたことは、これほどのボリュームのある相談が数回の電話相談で行われたことである。ラポールを築きつつ、的確な助言を提示していくのは大変至難と思うからである。それが可能になったのは、相談者の主訴だけでなく、なかなか言葉では語られにくい本音部分のニーズを汲み取って、ペアレントトレーニングを取り入れるなど的確な支持と提案、介入が大きく功をなしたと思われる。

          このような成功した終結事例の考察からは多くの示唆が得られ、大変有意義な事例検討であった。



          家族心理学会第29回大会 レポート04
          高本愛美
          鹿児島純心女子大学大学院

          [自主シンポジウム]
          コントロールを考える
          ―ジェンダー、DV、そして嗜癖―
          石井宏祐先生・石井佳世先生・松本宏明先生・横谷謙次先生・丸田なつき先生

           この発表では、ジェンダー・DV・嗜癖といった様々な問題からコントロールについて考えることができた。コントロールにとらわれ、その苦しみから抜け出せなくなってしまった人にどのような支援をするのか、また、どのような理解で語りかけていくのかを深く考え、学ぶことができた。
           DV被害者に対する質問紙調査の研究発表では、他者との関わりを持つことなどの、「個を超えるコントロール」を背景に持つことの重要性が示されていて興味深かった。


          [事例発表]
          原発問題による疎開児童を受け入れた家族の支援
          ―ブリーフセラピーとペアレント・トレーニング(行動療法)の併用―
          生田倫子先生

           先生の発表は、受け入れ家族が陥りやすい問題について時期を追っての説明からだったので、想像もしやすくとてもわかりやすかった。また、先生が受け入れ家族側のお母様に使われる言葉がとてもあたたかく、感銘を受けた。
           頑張りすぎてしまう受け入れ家族と支援される側の家族の間に生まれる悪循環はせつないものだと感じたが、先生の事例のようにアドバイスを行うことで解消されていった過程は、興味深かった。そして、先生の支援により自らのアイディアも取り入れ、関わろうとしていた受け入れ家族のみなさんの行動には感動した。

           


           

           

          家族心理学会第29回大会 レポート05
          今久留主舞
          鹿児島純心女子大学大学院

           私が今回の学会で印象に残ったのは、事例発表1の生田倫子先生の「原発問題による疎開児童を受け入れた家族の支援-ブリーフセラピーとペアレント・トレーニング
          (行動療法)の併用」である。
           震災における原発問題では、特に被害者の方をよく取り上げている。しかし今回は、その被害者を受け入れた側に焦点をあてており非常に新鮮であった。
          事例においては、行動療法であるペアレント・トレーニングと家族療法を併用している点に驚嘆した。家族療法の視点や技法を使いつつ、タイミングを見計らってペアレント・トレーニングで介入する。本当にすごいなと思った。また、ペアレント・トレーニングを行った後すぐにその効果が現れた時は、まるで魔法みたいだと感じた。
          私はもともと認知行動療法にも興味を持っていたので生田先生の発表を聞き、さらに興味を持った。またペアレント・トレーニングをカウンセリングでどのように生かしていくのかについても非常に興味を持った。

           二つ目は、自主シンポジウム1の「コントロールを考える-ジェンダー、DV、そして嗜癖」の中の一つである、横谷謙次先生の「覚せい剤使用をコントロールする方法の検討」である。
           覚せい剤を月に一度使用してしまう人に対して、自分をコントロールできていないと判断するのではなく、月に一度つまり29日間は自分をコントロールできているという点に着目し、ソリューションを広げ、支援していくというものが非常に自分にとって納得のいくものであり面白いと思った。自分の中にそういった発想が無かったため、非常に新鮮であった。きっとこういった発想が家族療法的視点なのだろうと感じ、さらに家族療法に興味を持った。



          家族心理学会第29回大会 レポート06
          谷田部正美
          青梅市役所

          ワークショップ2
          「乳幼児期における母子関係とその後の影響―臨床例からの学びと具体的な援助についてー」
          講師:鈴木廣子

          鈴木先生は、岩手県において妊産婦メンタルヘルス推進事業に携わり、産後うつ病と思われる母親のカウンセリングをされている。妊産婦メンタルヘルス推進事業とは、妊産婦のメンタル面にかかわるすべての何らかの問題を早期発見することで、虐待・障害時の早期発見と早期介入を促し、良好な母子関係の育成につなげていくことが目的である。
          具体的には、妊産婦用の質問セットが3つ。育児支援チェックリスト(9項目)、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS 10項目)、赤ちゃんへの気持ち質問票(10項目)である。点数が高い人は産後うつ病の可能性があるため、医療、保健・福祉行政と連携し母子に介入していく。
          母親が乳幼児にBonding(結合、絆)を形成することで、赤ちゃんから母親への愛着が形成されるが、その質が重要で母親の抑うつや不安が赤ちゃんの愛着形成の質を左右する。そして愛着は世代間で伝達されていく。
          母親自身の乳幼児期からの“母子関係”“母子をめぐる人間関係”に注目しながら介入することで、子育て支援につなげていくことが有効であると感じられたワークショップであった。


          自主シンポジウム
          「東日本大震災における心理的問題を包括的に捉えるー今後の支援の在り方に向けてー」 
          野口修司、若島孔文、吉田克彦、生田倫子、長谷川啓三

          ・野口先生は、石巻市で行政支援をされている。行政職員の特徴は、被災者でありながら支援者であり、被災者からの否定的な反応を受けながら、復興に向けた長期的で過大な業務を背負うという点である。
          先生は、全職員を対象とした健康調査や研修、個別面談をしている。震災後、今年の6月までに3回のメンタルチェックを行い、だいぶ良くなってきている印象があるが、15~20%が体調不良や不眠を訴えている。
          今後の支援としては、継続面談、メンタルヘルスに関する知識の普及等を続けるが、周りの人間が職員の業務について理解し、気遣いの言葉をかけることが一番大事ということが発表された。
          ・吉田先生は、福島県でSCとして支援をされている。福島県は他県と違い、原発という問題がある。そんな中で、同じSCが長期にわたりケアすることを前提に、目標を作って活動している。短期目標は、学習支援や心のケアを通じ今の生活を充実させること。中期目標は、学習・芸術・スポーツ等を通じてあらゆる可能性を広げること。
          そして長期的な目標として、震災・原発のせいで人生が台無しになった、ではなく、いろいろあったけど頑張ってこれた、自分の人生に花マルをつけてもいいな、というナラティブにすること。
          そして心理士こそ放射線に関する知識を持つことが震災支援にかかせないと強調されていた。
          ・生田先生は、親戚・知人宅に避難しているケースへの電話相談という支援をされている。相談はほとんど受け入れ家族(主に妻)からであった。最初は被災者へのより良いケアについての相談であったが、3~4ヶ月以降は受入家族の精神的な疲れに関するものであった。
          援助としては、避難家族の状態に関する心理教育、受入家族に対するブリーフセラピー、そしてお礼が有効であった。お礼は、受入家族がすばらしい被災者支援をしていることに日本国民として感謝する、という内容である。
          3つの発表とも、それぞれ被災者・支援者のできている部分を肯定し、個人的達成感を感じてもらうという部分が共通していると感じた。今後もどんな時にも「例外」に目を向けながら支援することが大事、との長谷川先生の言葉に、これからも地道に適切な支援が続けられるだろうということが感じられた。

           

          「青年期から成人期への移行期の女性の母親からの精神的自立―PAC分析を用いた面 接データの分析―」
          水元深喜

          近年は母娘関係が親密化していると言われるが、娘が精神的にどう自立していくの か、その自立とは実際にどのような体験を示すものなのかPAC分析を行った。

          PAC分析では、自分と母親の関係について思い浮かぶ言葉やイメージを20個書いても らったうえ、インタビューも行い娘が捉える母親との関係をパターンに分類し分析し た。親密性については、これまでの研究で同居・非同居の間で特に差が見られなかっ たためそこは考慮せず、精神的影響に関する質問を意識して作ったとのことであっ た。

          結果はたくさんあり複雑だったが、娘の精神的自立には信頼関係と心理的分離の高低 のみでは表すことのできない質的特性があった。特に興味を引いたのは、母親との信 頼関係も心理的分離も高く自立していても、母親の価値観への囚われが高い娘には母 親の価値観という枠づけがあり、その中で自立している様相が見られた。この枠づけ は娘から肯定的に捉えられており、現代における新たな自立の指針になっていると考 えられる。

          「ネグレクトが生じた家族への心理臨床的援助―多世代家族療法の視点から―」
          田附 あえか 大塚斉

          ネグレクト事案について施設心理職によるシステミックなアプローチに基づく支援を 行うため、母や祖父母の家族面接と個人面接を併用した。

          この事例では、チームで面接することを大事にしており、二人の心理士と、児童福祉 司、FSWが面接を担当した。親面接をすることで効果が期待できるため、親・祖父 母が施設を訪れた時、その時にいた心理士が面接をするというスタイルであった。

          座長の団先生は、いつもこうやったらええやないの、とおっしゃっていたが、親や祖 父母が来れるのは土日が多く、予算の面で土日は心理士は雇えないという施設がけっ こうあるとのこと。先生方の話では、親面接が一番効果がある→土日に面接を組むほ うが良い→でも、施設:必要がないのでは。他の心理士:子ども面接で手一杯、自信 がない等で、案外こういった親面接は行われていないとのことで、ちょっと残念に感 じた。

           

           


          家族心理学会第29回大会 レポート07
          狩野真理
          龍谷大学大学院

          「準備委員会企画シンポジウム2 夫婦の感情とシステム -夫婦はどのようにして危機を乗り越えるのか-」

          本企画は、自分自身が行っている研究テーマと重なっている部分が多く、とても興味深く聞かせていただきました。4人のシンポジストの先生方から、実証研究と臨床の視点から、夫婦関係の問題について多くの知見と、問題提起をいただきました。
          「構造としてのシステムではなく、人の思いが構成するシステムについて考える」というテーマから、思いあって結婚したはずの夫婦が、時間の経過とともに、夫婦関係満足度において著しいギャップが生じ、例えば、男性は結婚によって心理的安定が得られるが女性はそうではない、といった差異が生じてくるなどの多大な研究結果と臨床からの知見は、とても興味深いものでした。そして、夫婦・家族の変化を"change"ではなく"transition"として捉え考えるという視点は、その過程にどのような思いが交錯していたのかについて検討していくことの大切さを感じました。
          本大会は、参加していて、とても居心地がよく、温かくて落ち着きました。それは、大会準備に携わった先生方のご尽力のお陰であると同時に、この大会自体が大きな『家族』として機能しているのかもしれないと感じました。
          また、来年の家族心理学会に参加させていただきたいと思います。ありがとうございました。

           


           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

          3人のファミリーセラピストによるデモンストレーション面接

           

          今回の学会は初日しか参加できなかったのですが、その初日にNFBT学会で初めての企画が続き、たいへん興味深い有意義な時間を過ごさせていただきました。

          特に印象に残ったのが、東先生、水谷先生、若島先生による、デモンストレーション面接です。

          順番をじゃんけんで決めるなど、和気あいあいとした雰囲気のなか進められました。

          まず、東先生はシステムズアプローチです。悪循環を起こしているパターンを変えるため、今動いてくれるのは誰なのか、家族メンバー一人ひとりに状況や気持ちを聞き、誰かの発言を他のメンバーにあなたもそう思いますか?と確認。そして、動く意思があるかどうか念を押すのがとても印象的でした。

          3人のクライエント役は知っている方だったので、後で個人的に感想を聞いてみたら、父がすごく責められた感じがあって何とかしなくちゃと思った、とおっしゃっていました。見ていて父を責めているという感じはなかったと思うのですが、確実に家族の気持ちに変化があったのだとわかりました。

          水谷先生はSFAアプローチでした。最初に状況を詳しくたずねながら相手をねぎらうことで、ちゃんと話を聞いてもらえるという安心感があると思いました。そして、スケーリングクエスチョンや今より良くなった時の状態をイメージさせる質問をしたうえで、観察課題を出して終了。面接後、家に帰ったら今までとは違う視点で生活できそうで、そのことがシステムを変えるのだろうと思えた面接でした。

          若島先生は、親の前では話せないこと、子の前では話せないことがあるでしょうということで、前半は父母とIPを別々に面接しました。それぞれの面接が終わったらブレークを取り、後半はIPのつらさを軽減するにはどうしたらいいかに焦点を当てていました。誰かを変えることではなく、IPがどれくらい我慢しているかを知るのが大切ということで、課題を出されていました。IPの我慢を知るということは、問題を直接解決するように見えないかもしれないけど、確実に今までのパターンが変わると思いました。

          どの先生もパターンを変えるポイントをきっちりと押さえていらっしゃる、しかも時間もきっちりですばらしかったです。一つでも真似して自分のものにできたらと思いました。

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