第11回国際エリクソニアンアプローチ大会についてのレポート

 

ozaki 01

 

 

 

執筆者 尾崎望

Nova Southeastern University(フロリダ州)
家族療法博士号学生

大学運営Brief Therapy Instituteのセラピスト

 

 

 


目次

はじめに

レポート1:ベティー・アリス・エリクソン とエリック・グリーンリーフによるエリクソニアン手法:物語りが属する場における物語りの語り/ 大会前ワークショップ
レポート2:ヘレン・エリクソンによる"生理心理的問題を抱えるクライエント援助における問題とは。"/ キーノート・スピーチ
レポート3:アーネスト・ロッシ と後援プレゼンターであるマウロ・コッゾリーノとジオバーナ・シリアによる意識を形成する:エリクソンの回復と治癒にかんするリサーチの伝統を引き継いで/ キーノート・スピーチ
レポート4:マリリン・ウェッジによる子供とのブリーフセラピーにおける言語を介して解決を導く/ ショート・コース
レポート5:スティーブン・アンドレアによる問題を解決するためにクライエントの問題についての比喩を探すのを手伝うことについて:アンドリュー・オースティンにより開発されたMetaphors of Movementを用いて。/ 実践デモンストレーション
レポート6:ステファン・ギリガンによるユーティリゼーションに関する一理論:何故に、如何に否定的な経験が肯定的な経験に変容するのか。/ キーノート・スピーチ
レポート7:ウェンデル・レイによるMRI ブリーフセラピー:ジョン・ウィークランドとリチャード・フィッシュのアプローチの考察/ ワークショップ
レポート8:ジェフリー・ザイグによるベートーベンとエリクソン/ キーノート・スピーチ

 

 


はじめに

 

アリゾナ州のフェニックスにおいて2011年12月8日から11日に渡ってThe Milton H. Erickson Foundation (ミルトン・エリクソン財団)により主催されたThe 11th International Congress on Ericksonian Approaches to Psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods (第11回国際エリクソニアンアプローチ大会:エリクソニアンメソッドの変容について) についてレポートします。学会についての正規の情報を得たい方は学会のホームページ、http://www.ericksoncongress.com/ までどうぞ。こちらのホームぺージにおいて“Events”の箇所をクリックしていただくとドロップダウンのメニューから”Ericksonian Congress”を選んで頂くとこの大会のページに行けます。

”Handouts”の箇所をクリックして頂くとプレゼンターの大会におけるスライドなどが得られます。また学会のホームページから“Shop”の箇所をクリックして頂くと、この大会におけるワークショップのスライドが含まれたオーディオCDを購入できます。


今回、このレポートを書く機会を与えてくださった生田 倫子先生、花田 里欧子先生、またブリーフセラピー協会の役員の方達に感謝しています。翻訳、意訳作業を通して個々のワークショップの内容をしっかりと捉えられるいい機会となりました。ミルトン・エリクソン財団からはレポートの承諾と貴重な大会の写真を頂きました。そしてレポートを書かせて頂いたプレゼンターからはレポートに関する承諾のみならず、温かい応援の声、そして数人からは著書まで贈与していただき感謝を表しきれない次第です。

個々のレポートに関する注釈ですが、英語で表されたニュアンスを日本語に見合うように翻訳、意訳したのでそのニュアンスが必ずしもプレゼンターの意図したものと完全に一致するかどうかは定かではありません事ご了承下さい。紹介したワークショップの内容に興味がある場合等は是非ともプレゼンターに直接連絡して頂くのが最も有効であると思います。ですので、プレゼンターの連絡先を大会関係のマテリアルから得られたものに限り、個々のレポートの終わりに記載しています。

さて皆さんご存知の通り、フェニックスはエリクソン博士が長年住み、生涯を閉じた由来ある地です。普段、フロリダに在住している私にとっては厳しい寒さの中で学会が幕を開けました。今回、学会費用を免除して貰った代わりに、大会のボランティアを勤めていたので私自身が参加したかったワークショップに全て参加できませんでしたが、臨床催眠、そしてブリーフセラピー一般についても深く考えさせられました。

 参照文献

 

  • Erickson, B. A. (2011, December). The Erickson way: Telling stories where they belong. Handout for a workshop at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ. Handout retrieved from http://www.ericksoncongress.com/handouts/ 
  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ.


プレゼンターの連絡先:

Betty Alice Erickson, MS., L.P.C., L.M.F.T.
Milton H Erickson Institute of Dallas
4144 North Central Expressway Suite 520
Dallas, Texas 75204

Phone: (214) 676-3745

Email: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

 

 

 


 

レポート1:Betty Alice Erickson (ベティー・アリス・エリクソン:エリクソン博士の娘)) とEric Greenleaf (エリック・グリーンリーフ) による“The Ericksonian Way: Telling Stories Where They Belong”(エリクソニアン手法:物語りが属する場における物語りの語り)/ 大会前ワークショップ


物語の語りがいかにクライエントにとって教授的で治療に繋がるかということを踏まえ、参加者にクライエント自身の経験を応用した物語を創る方法教え、さらにそれをセラピーにおいて主要化していく方法を教えることを目的としたコースでした。(The Milton Erickson Foundation, 2011, Decemberより) 物語りの特性、物語を語る上での知るべきこと、物語の種類、物語の一般性と独自性、物語を語る方法、比喩について、異なった目的に対応した物語のレパートリーの確立等が説明されました。その中でも最も根本的なアイディアについて簡単に説明します。

まず物語の特性についてです。

  1. 自然的な催眠のトランスを迅速に、簡単に、快くを創り出します。クライエントは必要なだけ深いトランスに陥り、意味のある箇所がアンカー(参考にな る経験)になる中、クライエントはトランス後もその物語自体を覚えています。また無意識が必要な形でその物語を解釈し、その後の応用の為にそれを記憶します。
  2. 他の人が同じような問題を抱えていたことを知らせることで、物語はクライエンの問題を標準化します。
  3. 暗示的に教授します。
  4. クライエントがそのメッセージを自ら解釈することにより、独立を促進させます。
  5. セラピストは解決法を提示しないのでクライエントの自主性を尊重して促進します。
  6. セラピストとクライエントの間のラポートまた対等性に寄与します。
  7. 日常から使われている学習方法です。
  8. 聞き手の幼心を引き出し、聞くことを楽しくします。(Erickson, 2011, December, p. 1)

物語を創る上での詳細性と一般性について重要ではない箇所はクライエントと迅速な繋がりを作るため詳細に語り(バニラ・アイスクリーム、チョコレート・クッキー等)、重要である箇所についてはクライエント自身の対象を想像して貰うため一般化して語る(黒い鼻で尻尾を振り愛らしい目をしたある犬)事を強調していました。物語を話す過程については、クライエントへの一心の集中と関係性の保持、抑揚がある催眠誘導時に使われる声の調子と重要な話の箇所での一旦停止、そして喚起的な単語の使用(“ただ空色の青”ではなく“美しく輝く空色の青”)と笑顔を強調していました。(Erickson, 2011, Decemberより)

そして治療的物語は:

  1. 1. セラピストが確定した目的を含んでいる。
    1. クライエントに他の目的を選んでもらうこともできる。
    2. クライエントにセラピストのゴールを自分に合った目的に変えてもらうこともできる。
  2. その目的についてのメッセージを含んでいる。
    1. セラピストまたは他の人についてである。
    2. 真実でなくてなならない。
    3. どこかで聞いたことまたは読んだことがある。
  3. 注意をそらす何かを含んでいる場合がある。(私の理解だと、よりメッセージを無意識のレベルでクライエントに認知して貰う為。)
  4. 多くの場合、楽しい。
  5. 教授し指示する。
  6. クライエントの状態を正常化する。
  7. 長い間にわたって用いられている。(Erickson, 2011, December, p. 4)

またプレゼンターはセラピストとクライエントの関係性についてとても強調していました。彼らによると、問題はクライエントの固執したパターンによる症候的トランスとした上で、クライエントがそれをセラピストに提示し、セラピストがそれを治療的トランスに変換し、クライエントに再提示するという考えです。ですので、クライエントがセラピストを導き、セラピストがそれを観察そして導き返し、それをクライエントが無意識のレベルで認知していくという過程が続いていきます。その過程においてプレゼンターはセラピストの変化への期待を視線と呼吸でクライエントに表していくことを強調していました。

これらの理解を踏まえた上で、デモンストレイションそして参加者同士でペアになり、相手の物語を聞き、それに彷彿された他の物語を語るという練習をしました。相手に目を合わせ、物語を聞きながら自分の物語を無意識のレベルで形成していくというのはとても困難でしたが、いい練習になりました。個人的にはベティー・アリスとエリックの一心な姿勢がとても印象的で、大会が終わった今でもその経験が鮮やかに思い浮かべられます。物語の創り方について質問をした時に、エリックが物語の方向性、目的、提示したい教訓とゴールの種類(勇気、成功、解決、満足、将来は変えられるという悟り、習慣の拡大、等)を知ることだと話してくれたのに対して、べティー・アリスは、“テクニックではなくて、あなたのその人柄が大事なのよ。私のお父さんはそうでした。”と彼女の温かい眼差しを通して訓えてくれました。

参照文献

  • Erickson, B. A. (2011, December). The Erickson way: Telling stories where they belong. Handout for a workshop at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ. Handout retrieved from http://www.ericksoncongress.com/handouts/
  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ.

プレゼンターの連絡先:
Betty Alice Erickson, MS., L.P.C., L.M.F.T.
Milton H Erickson Institute of Dallas
4144 North Central Expressway Suite 520
Dallas, Texas 75204
Phone: (214) 676-3745
Email: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

 

 


 


レポート2:Helen Erickson (ヘレン・エリクソン: エリクソン博士の義娘) による“The problem with helping people with physiological problem is…” (“生理心理的問題を抱えるクライエント援助における問題とは。。”) / キーノート・スピーチ


このプレゼンテーションは生理心理的問題を扱う際にクライエントの世界観を模範し(Modeling)そのクライエントの役割を模範する(Role modeling)介入の基礎となるエリクソニアン・アプローチについて探求します。関連のある個人的経験、職業上の経験、また研究を交えて説明されました。(The Milton Erickson Foundation, 2011, Decemberより)
冒頭で、必要な機会に起こる人間の自然の成長と治癒力を強調した上で、セラピーとはクライエントの人生の置ける意味または意義の獲得を援助しその際に起こる自然の治癒力を引き出し、True self (自分の本質)を導くものだと説明していました。ヘレンによるとモデリングとロール・モデリングとはクライエントの成長と健康を促進するためにクライエントの世界観を模範し、そのクライエントの役割をセラピストが模範しクライエントに提示していくことです。その過程とは、1.クライエントを観察し彼らを個々に対応する(一般的せずに) 2.クライエントの世界観を理解する 3.クライエントが担いたい役割を探し促進させる。またクライエントを問題を通して診るのではなくその人自身として観る(漢字の違いは意図的です)ことにより、生物物理、認知、社会、そして心理を統合したホリスティックなアプローチを提唱しました。(Erickson, 2011, Decemberより)


セラピーの過程について、まずはクライエントの信頼を得ることをプレゼンターは強調しました。その為には、明確な言葉を使って、クライエントを肯定する立場をとり、期待を持たず、自分の精一杯を用いることです。それにより、クライエントが先導をとりそれをセラピストが評価していき、且つクライエントの依存を独立と入れ替えることを提唱しました。結果、クライエントが他の人との関係を保ちながらも個人として独立できることを学びます。その過程において、いかにクライエントとの歩調合せと回帰的な先導(クライエントからセラピスト、セラピストからクライエント)を強調しました。最後にこれらのホリスティックな考えが如何に近年世界において広がりつつある疾病予防、健康的なライフスタイル、そして人々のニーズを共に模索していく新たな動きと調和しているかを話していました。(Erickson, 2011, Decemberより)

ヘレンのスピーチからはセラピストとしてのとても大事な心構えを教えられた気がします。普段から気にかけてはいる事でしたが、彼女の説得力のあるスピーチを通して改めてセラピストとクラインとの関係性について深く考えさせられました。以下の紹介文献はヘレンが発表した内容に関する本です。

 

参照文献

  • Erickson, H. (2011, December). The trouble with working with people who have physiopsychological problems,,, PowerPoint slide for a clinical demonstration at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ. Handout retrieved from http://www.ericksoncongress.com/handouts/
  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ.

紹介文献

  • Erickson, H. L. (Ed.). (2006). Modeling and role-modeling: A view from the client’s world. Cedar Park,
  • Texas: Unicorns Unlimited.

 

 


 

 

レポート3:Arnest Rossi, Ph. D. with support faculty of Mauro Cozzolino, Ph. D. & Giovanna Celia, Ph.D. (アーネスト・ロッシ と後援プレゼンターであるマウロ・コッゾリーノとジオバーナ・シリア)によるCreating consciousness: Continuing Milton Erickson’s legacy of research on rehabilitation & healing (意識を形成する:エリクソンの回復と治癒にかんするリサーチの伝統を引き継いで)/ キーノート・スピーチ

 

この口演においては、心理社会的遺伝子を形成することが臨床催眠また他の心理療法における神経化学を支持する土台となることが提案されました。このアプローチは肝細胞の活性化、慢性的炎症と細胞の酸化の縮小を促進させる心身治癒と問題解決に向けのての今日、唯一の実証に基づいたアプローチだとされました。根本となるアイディアは、環境的そして心理的介入が脳の適応性を引き出し成長させるというのもです。(The Milton Erickson Foundation, 2011, Decemberより)

このモデルの構成部分としては環境、精神、リボン核酸、遺伝子、脳からなります。環境が精神に影響を与え、催眠療法、認知的または行動的なプロセスにおいて精神がリボン核酸における治癒と回復を促進し、その過程が遺伝子に影響を与え、遺伝子がたんぱく質を形成し、脳の肝細胞を刺激し新たな神経ネートワークを形成し結果、新たな意識を形成するこのプロセスが円環的に続いていきます。たんぱく質を形成させ脳を成長させる刺激的な考えとは反対にストレスは学習を司る海馬を縮小させ結果的に脳を抑圧します。ですので人間の心身におけるこの進化(上記のプロセス)はウルトラレイディアンリズム(縮日周期)を介して無作為にそして突然的に日々起こるのです。

このモデルに基づき、エリクソンのナチュラリステッィク・アプローチとは心身の自然なサイクルを促進させる心理療法であると定義しました。さらにこのモデルを支持するプレゼンターのリサーチを発表しました。そのリサーチにおいて、ポジティブな経験が遺伝子発現に作用したことを発見しました。

プレゼンターが話していた通り、彼らの理論とそれを支持するリサーチは心理療法界にとってかなり有意義なものでしょうね。心理療法・催眠療法が及ぼす影響をクライエントの遺伝子のレベルまで突き詰めている研究は他に例を見ないのではないでしょうか。一つ前のヘレン・エリクソンのレポートと重なり、如何に統合的にクライエントの援助に携わっていくことが大事なのかを教えられました。以下の紹介文献はプレゼンター達が発表した内容に関する本です。

参照文献

  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ.

紹介文献

  • Rossi, E. (in press). Creating consciousness. Phoenix: The Milton Erickson Foundation Press.

プレゼンターの連絡先:
Ernest Lawrence Rossi, Ph.D., ABPP
MHE Institute of the California Central Coast,
Los Osos, California, USA
Email: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。 .

 

 


 

 

レポート4:Marilyn Wedge, Ph. D. (マリリン・ウェッジ)によるUsing lauguage to generate solutions in brief children with children (子供とのブリーフセラピーにおける言語を介して解決を導く) / ショート・コース

セラピストが問題を思考して解決する際に使用する言語(常用で使われる“言語”の意味とは異なり、ある物の見方とその物の見方における語用を指します。)がその問題が効果的に解決されるかどうかを左右します。このワークショップは子供が抱える深刻な問題を扱うのに敬意的で効果的で子供に重点をおいた家族療法である新たなモデルが紹介されました。このモデルにおいては、エリクソンのユーティリゼーションと比喩を用いて解決を導くことを目的とした戦略的会話を子供とその両親とすることが主なようです。(The Milton Erickson Foundation, 2011, Decemberより) 子供の抱える問題を述べるのに用いる言語がその問題の解決を形作るとした上で、プレゼンターは精神疾患に基づく言語そして家族療法の言語を比較し説明しました。(Wedge, 2011, Decemberより)

注意欠落多動性障害、不安障害、子供のうつ病などが例として挙げられる精神疾患の言語を用いた場合は向精神薬を用いた治療にたどり着きます。プレゼンターによると、現在アメリカにおいて7百万人以上の子供が向精神薬を投与されています。プレゼンターはこの現状をアメリカの大惨事であるとし、製薬会社が新たなマーケット市場確保を目指していることを挙げました。これに対して家族療法の言語は子供の抱える問題をその環境の中で捉えるアプローチであるとし、家族内のストレスはその子供の問題を通して具現化することをプレゼンターは提唱しました。その考えを用いて対処した幾つかの症例を話す中で、プレゼンターは子供を扱う上では家族療法の言語である比喩の大事さを強調していました。(Wedge, 2011, December より)

私の家族療法プログラムで毎日のように習ってはいたものの、“子ども抱える問題はその家族の関係性の現われである”と聞いたときは理解するのに少し掛かりました。システムズ・アプローチが初めて提唱されて数十年がたった今でもその考え方は斬新ですね。ここアメリカでも学校関係者、学校心理学者、また学校関係の法律に関しての民間や政治家の議論は未だに子供個人のみ、または先生の技量に重点をおいたアプローチが主に用いられています。しかし少しずつではありますが家族療法家や理論家がその領域で活躍し始めてきているところです。以下の紹介文献はマリリンの発表した内容に関する本です。

参照文献

  • Wedge, M. (2011, December). Using language to generate solutions in brief therapy with children. PowerPoint slide for a clinical demonstration at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ. Handout retrieved from http://www.ericksoncongress.com/handouts/
  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ.

紹介文献

  • Wedge, M. (2011). Suffer the children: The case against labeling and medicating and an effective alternative. New York, W. W. Norton & Company.

プレゼンターの連絡先:
Marilyn Wedge, Ph. D.
Website: WWW.MarilynWedgePhd.com

 

 


 

 

レポート5:Steven Andreas (スティーブン・アンドレア)によるHelping a client explore their metaphor for their problem to discover a solution (問題を解決するためにクライエントの問題についての比喩を探すのを手伝うことについて): Andrew T. Austin(アンドリュー・オースティン)により開発されたMetaphors of Movementを用いて。/ 実践デモンストレーション

比喩の使用は主に準優位は大脳半球を活性化させるので、クライエントの問題の直接的な内容を知らずして使用することができます。クライエントの問題についての詳細を比喩の中で聞き出すことは、無意識の理解に直接的に働きかけ、有効な変化をもたらすのに大事な要素であるとしました。(The Milton Erickson Foundation, 2011, Decemberより) そのプロセスは以下の様です。

  1. 比喩をクライエントから引き出す。
  2. 比喩についてクライエントと探求する。
  3. クライエントが現在用いてる対処方法を聞きだす。
  4. 新たな対処方法を引き出す。
  5. 新たな対処法を比喩の中でテストする。(Andreas, 2011, Decemberより)

実践デモンストレーションではボランティアの人とスティーブンとの関係性は臨床催眠そのものでした。(誘導、声の調子、ペーシング、等)。プロセス1は、クライエントが如何に問題に行き詰まっているかを、“What is that like? (Andreas, 2011, December, p. 1) (それはどんな風ですか?)”という質問を介して比喩の形で聞きだすことです。例えば、クライエントが袋小路に閉じ込められて、頭をレンガ壁に叩きつけている、等です。プロセス2では、感覚上の詳細をクライエントと一緒にも模索していきます。例えば、今の比喩を例にとると、“その袋小路から何が見える?”“レンガのパターンは、色は?”“そこで何か音が聞こえるか?”等です。より沢山の感覚上の詳細を得ることでクライエントが如何に問題に行き詰まるっているかを知ることができます。この詳細こそがクライエントの問題に対する理解なのです。(Andreas, 2011, Decemberより)

プロセス3では現時点でクライエントが如何に問題を対処しているかを聞きだします。今の例を使うと例えば、“レンガ壁を叩いている”“壁に穴を開けようとしている”等です。そしてそれらの対処法が現時点で如何に効果的であるかを聞きます。大体の場合、それらの対処法は効果的ではありません。プロセス4では他の対処法をクライエントと共にその比喩において引き出します。そうすることで、優位な大脳半球からは思いもしなかった解決法が得られることができます。質問としては”What else could you do?” (Andreas, 2011, December, p. 2) 他にそこで何が出来ますか?)等です。ここで大事なのは、セラピストが質問を通してクライエントの比喩を濃厚にしクライエント自身の解決法を探してもらうことです。(Andreas, 2011, Decemberより)

最後のプロセス5においては見つかった解決法をその比喩の中で有効性をクライエントに試してもらいます。もしそれが有効でない場合はプロセス4に戻って他の解決法を探してもらいます。もし比喩の中で有効であることが分かったなら、実際の状況を頭の中で思い浮かべてもらいその解決法を試してもらいます。(Andreas, 2011, Decemberより)
このスティーブンのデモンストレーションを自分の目で実際に見られたことはとても貴重でした。彼とデモンストレーションのボランティアとのやり取りからはとても学ぶことが多かったです。例えば、彼の、質問一つ一つを丁寧にクライエントに理解して貰い、共同的に比喩を作り上げて行く様は正式な催眠を使う使わないに限らずとても大事ではないでしょうか。彼の説明どおり、このデモンストレーションでは実際の問題の内容については全く触れずに起承転結を感じさせる構成を創りだした点では、ブリーフセラピーの新たな形を提唱しているのではないでしょうか。以下の紹介文献はアンドリューによるMetaphors of Movementを用いたセラピーセッションのDVDです。

参照文献

  • Andreas, S. (2011, December). Helping a client explore their metaphor for their problem to discover a solution. Handout for a clinical demonstration at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ. Handout retrieved from http://www.ericksoncongress.com/handouts/
  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ.

紹介文献

プレゼンターの連絡先:

 

 


 

 

レポート6:Stephen Gilligan, Ph.D. (ステファン・ギリガン)によるA theory of utilization: Why and how negative experiences can be transformed into positive ones (ユーティリゼーションに関する一理論:何故に、如何に否定的な経験が肯定的な経験に変容するのか。)/ キーノート・スピーチ

 

ユーティリゼーションはミルトン・エリクソンの心理療法における最たる貢献だとし、いかなるパターン(行動的、認知的、情緒的)創造的な受け入れと使用を目的達成(セラピーの結果)の為の根底とすることだとプレゼンターは定義しました。このプレゼンテーションでは何故に、如何にユーティリゼーションが生成的原理であるのかを理解する為に理論の構成を説明するとしました(The Milton Erickson Foundation, 2011, Decemberより).

ユーティリゼーションの一般理論

  1. 現実とアイデンティティが形成される。
  2. 二つの意識を介する:創造的な無意識と意識の状態。
  3. 創造的な無意識とはあるパターンの全てのレパートリーを含有するQuantum field (直訳:量子場)である。
  4. このSuperpositional field (意訳:想像的なフィールド)はミクロレベルそしてマイクロレベルにおいて作用する。
  5. 意識はその無限のレパートリーをある具体的で具象的な形として限定して表す。
  6. その具象の様(形、意味、その後の具象化、等)はその具象の観察者(クライエント、セラピスト等)の意識の状態に作用される。
  7. その意識のフィルターは多くのレベルで作用する(神経、社会、文化、家族、個人等。
  8. 創造的で健康的な対応とは意識と無意識の間の開かれた疎通である。
  9. これまでの点を踏まえて一般的な方法としては有効的である限り、意識に問題解決を任せ、効果的でなくなり次第、無意識にアクセスし新たな方法を見つけそれを試してみることである。
  10. Neuromuscular lock (意訳:神経筋の硬直化)が創造的な疎通を遮断し、融通の利かないrepetition compulsion (意訳:衝動のパターン化)を強制します。
  11. 神経筋の硬直化は以下の場合に起こります。
    • 怒りや暴力の状態
    • 恐怖の状態
    • 情緒的切断、解離の状態
    • 疲れ、無関心などの理由で寝入るような状態
  12. 結果、心理療法のゴールとは新たな反応のパターンを探すために神経筋の硬直化を開口し意識と無意識の疎通を可能にすることであるとしました。
  13. 創造的なユーティリゼーションは以下の二つのステップにおいて生成的機能を回復させます。
    • 創造的な受容
    • 新たな形への変容
    • ユーティリゼーションのステップ
      • ユーティリゼーションの最初のステップの創造的な受容においては、経験的パターンまたはクライエントが深い専心におちいり生成的状態に入ります。その次のステップである新たな形をを創る過程では、ひとたびその生成的状態に入れば生成的フィルターを通して新しい具象的な形が生まれる場合があります。その生成的状態とはa, 心身の協調、b. 受容的なフィールドへの開放、c. 受容的な意図とユーティリゼーションにて特徴付けられています。(Gilligan, 2011, Decemberより)
  14. セラピストまたはクライエントもこの創造的なユーティリゼーションを学び活かすことができます。
  15. 大事な臨床的質問:”この変容は主にセラピスト又はクライエントによってもたらされたものか?”(Gilligan, 2011, December, pp. 3-15)

個人的な意見として、このスピーチはユーティリゼーションを理解し、用いる上で非常に興味深く統合的な心構えを提唱している点で有意義でした。構成主義の視点から観ると、クライエントのあるコンテクスト(状況)における行動パターンが無限に存在するという考えはクライエント共に現実を構築していく上でとても有意義な立場ですね。またこの理論がクライエントそしてセラピストにも当てはまるというのは素晴らしい点だと思います。私自身思うに、セラピスト自身もクライエントを援助する上で、束縛的なものの見方に陥ってしまう可能性があるのではないでしょうか。例えば、この“このクライエントはこうだから、こうなんだ。”という考えはセラピストのセラピーにおける行動を束縛してしまうことがあると思います。


また、この理論の構成を踏まえた臨床プラクティスの実践についてもデモンストレーション等で是非とも目の当たりにしたかったです。私の勝手な意見ですが、ステファンの以下の文献と重ねてこの理論を理解するのをお薦めします。

参考文献

  • Gilligan, S. (2011, December). The utilization principle and generative change. PowerPoint slide presented at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ. PowerPoint retrieved from http://www.ericksoncongress.com/handouts/
  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 1th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ.

紹介文献

  • Gilligan, S. G. (1988). Symptom phenomena as trance phenomena. In J. K. Zeig & S. R. Lankton (Eds.), Developing Ericksonian therapy: State of the art (pp. 327-352). New York: Brunner/Mazel.

プレゼンターの連絡先:
Stephen Gilligan, Ph.D.
Email address: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
ウェブサイト:www.StephenGilligan.com

 

 


 

 

レポート7:Wendel Ray, Ph.D. (ウェンデル・レイ)によるMRI brief therapy – John Weakland and Richard Fisch at work (MRI ブリーフセラピー:ジョン・ウィークランドとリチャード・フィッシュのアプローチの考察)/ ワークショップ


ジョン・ウィークランドとリチャード・フィッシュのMRIアプローチは今日、用いられているモデルの中でも最も効果的で影響力があります。オリジナルの執筆と臨床記録を用いてジョン・ウィークランドとリチャード・フィッシュのインタクショナル・セラピーの理論と実践への貢献がプレゼンターにより描写されました。またMRIブリーフセラピーの概念的構成とクライエントの強みに重点を置いた臨床テクニックが説明されました。(The Milton Erickson Foundation, 2011, Decemberより)


プレゼンターはMRIアプローチの根底として1.文化人類学の方法論(Weakland, 1951)、2.コミュニケーションの本質的前提、3.インタラクショナル・セラピーを挙げ、如何にクラインとのコミュニケーションを聞き観るかを強調しました。例えば、セラピーの真っ最中、セラピストが自分の顔を掻いたとします。その場合、これらの根底の観点からすると、クライエントとのどれかのやり取りがそれを発生させた、と考えることになります。

ジョン・ウィークランドとリチャード・フィッシュの実際のセラピーのビデオを通して、ウェンデルが彼らのアプローチの幾つかの要点を指摘しました。まず“問題の本質は何か?”“それはどの様に問題なのか?”そして“その問題は現在どの様に対処されているか?”という事を捉える為にクライエントのコミュニケーションを注意深く聞くことをプレゼンターは強調しました。例えば、クライエントが“娘が全然食べないんです。”と言ったとします。その際、どの単語が強調されているのかに注意を払うことです。“食べない”に強調がある場合と、“娘が”に強調がある場合とでは意味のニュアンスが違ってきますね。これによりクライエントの世界観であるポジションが全く異なってきます。またその理解した世界観をクラインに提示することでセラピストがYes Set (私の理解だと、クライエントが、セラピストのそのクライエントの問題状況に関する言及を反復的に肯定することで、その後のセラピストの介入をより受容してもらい易くする臨床テクニック)をつくっていくことが出来ると説明されました。

さらにクライエントの問題についてのメインテーマ、またそのテーマを支えさらに問題解決から遠ざけている信念を徐々に挑戦していく為に、クライエントが如何に問題についてコミュニケーションしているかについての詳細を観察することを強調していました。これについてはプレゼンターは記述と説明の関係について”The case of ‘description,’ ‘tautology,’ and ‘explanation’” (Bateson, 2002, chapter III, section 9)を通して学ぶことを薦めました。

普段からMRIアプローチにはかなり影響を受けていて用いてはいたのですが、ウェンデルの説明を聞いていて改めて、その深さを知りました。如何にクライエントとのやり取りを注意を向けて観察することが大事かを思い知らされました。

参考文献

  • Bateson, G. (2002). Mind and nature: A necessary unit. Cresskill, New Jersey: Hampton Press.
  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ. Weakland, J. H. (1951). Method in cultural anthropology. Philosophy of Science, 18(1), 55-69.

 

 


 

レポート8:Jeffrey Zeig, Ph. D. (ジェフリー・ザイグ)によるBeethoven and Erickson (ベートーベンとエリクソン)/ キーノート・スピーチ

 

このキーノート・スピーチではベートーベンとエリクソンの手法における表現に富む要素が比較されました。気分とものの見方は情報によってではなく表現に富む要素によって感化されるとされました。(The Milton Erickson Foundation, 2011, Decemberより) ベートーベンとエリクソンは如何に聞き手/クライエントに如何にインパクトを喚起するかに精力を尽くしました。ですので二人のインパクトのコードには明確な類似点があるはずですとプレゼンターは冒頭で述べました。(Zeig, 2011, Decemberより) 
音楽の表現にはコード化された文法があります。エリクソンの催眠のインパクトのコードは驚くほど音楽のコード化された文法に似ています。これを踏まえ、プレゼンターは音楽とエリクソンの暗示のコードを明確化していきました。このスピーチの目的としては1.新たなモデルを提示することでエリクソンの業績を理解、摸製し、進歩させること、2.これまでは正しく研究されなかった催眠の根本的な何かを理解すること:催眠のインパクトは誘導の構成において暗示的に包埋されている。この研究されていない複雑な繊密さことが心身の状態を変容させる何かなのです。同じように音楽のインパクトのコードは暗示的な構成が複雑に精密されることで聞き手に影響を与えます。その作曲の構成的なメカニズムこそが聞き手の感情を喚起し心身の状態を変容させるのです。(Zeig, 2011, Decemberより) ベートーベンの音楽における暗示的なインパクのコードの例を挙げると

 

  1. 物語、
  2. 早期の行動化(力強い序章)、
  3. 初期における緊張の増加、
  4. 最初から終わりまでにかけての緊張の調整、
  5. 硬さと柔らかさのコントラスト、
  6. 繰り返し、
  7. 回帰性:主題とその変奏、
  8. 構想的展開:定主題の展開と複製、
  9. シーディング(あるアイディアの根源を与えること)とフォーシャドーイング(予示すること)、
  10. 不安定さ・不調和・欺き・不協和音、
  11. 斬新さ、
  12. 多岐のレベルに渡る演出、
  13. アチューンメント (同調) (Zeig, 2011, December, pp. 7-8)、

等(プレゼンターはこれより遥かに多い例を挙げましたが、このレポートでは以上の点に留めておきます。)があります。


催眠においては、このインパクトは言語の喚起的な側面によってもたらされます。蜜にそして構想的に構成された言語の形の内の復言語と非言語のメカニズムが感情を喚起し心身の状態を変容させます。これこそが私達がミルトン・エリクソンから学んだレッスンなのです。(Zeig, 2011, Decemberより) 音楽の暗示的なインパクトのパタンーンの内、催眠にも当てはまるものは、

  1. 早期の行動化(力強い序章)、
  2. 初期における緊張の増加、
  3. 最初から終わりまでにかけての緊張の調整、
  4. 硬さと柔らかさのコントラスト、
  5. 回帰性:主題とそのバリエーション、
  6. シーディング(あるアイディアの根源を与えること)とフォーシャドーイング(予示すること)、
  7. 不安定さ・不調和・欺き・不協和音、
  8. 多岐のレベルに渡る演出、
  9. アチューンメント (同調)、
  10. 精密さ(Zeig, 2011, December, p. 9)、

等(プレゼンターはこれより遥かに多い例を挙げましたが、このレポートでは以上の点に留めておきます。)があります。
以上のように暗示の影響力が心身の状態を変容するのに必要なのです。ですので聞き手又はクライエントが暗示的に影響されているのに比べ、芸術の創造者(コンポーザー、セラピスト)は明示的にインパクトを構成し聞き手又はクライエントに提示することができるのです。この暗示の反応性が催眠においての核なのです。エリクソンに至っては暗示の反応性に関するアーティストでした。心身の状態についてですが、否定的な状態と肯定的な状態とは様々な特徴の違いがあります。(Zeig, 2011, December より) 例えば、

  1. 遊離と従事、
  2. 混乱と明確、
  3. 欺きと信頼、
  4. 酷評と改善、
  5. 偏見と公平 (Zeig, 2011, December, p. 12)、

等 (プレゼンターはこれより遥かに多い例を挙げましたが、このレポートでは以上の点に留めておきます。)の違いがあります。これを踏まえると、クライエントを援助する方法論として暗示の構成を用いてそのクライエントをより肯定的な心身の状態に変容することになります。プレゼンターによると心身の状態を変容させるのには催眠の技術が必要だそうです。次に言語についてですが、言語は喚起的側面・機能と情報的側面・機能があります。この喚起的機能こそが心情的インパクトを生むのです。これに比べ、音楽は喚起的側面・機能のみが暗示的に含有されています。ですのでこの比較から言えることは、心情的インパクトを生むのには暗示された構成が必要であるという事です。構成が明示された場合、それは情報として処理されてしまうからです。(Zeig, 2011, Decemberより)


このスピーチとステファン・ギリガンのスピーチを重ねて考えてみると面白いのではないでしょうか。例えば、“想像的無意識の状態”( Gilligan, 2011, December)というのは“暗示的な構成” (Zeig, 2011, December) がクライエントに影響を与えた上で喚起されるという感じですね。心身の状態についても彼らのスピーチは共に意味のある視点を与えてくれます。ステファンが挙げた“神経筋の硬直化”( Gilligan, 2011, December, p. 9)を引き出す状態(怒りや暴力の状態、恐怖の状態、情緒的切断、解離の状態、疲れ、無関心などの理由で寝入るような状態)はジェフリーが挙げた”否定的な心身の状態” (Zeig, 2011, December, p. 12)(遊離、混乱、欺き、酷評、偏見)に当てはまるのではないでしょうか。最後に、音楽の比喩を用いて催眠を説明する試みは興味深いですね。アーネスト・ロッシの生物神経遺伝子学に基づいた催眠へのアプローチとも比べて新しい見解が生まれますね。


参照文献

  • The Milton Erickson Foundation (2011, December). The 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods. Syllabus distributed at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ.
  • Zeig, J. (2011, December). Beethoven and Erickson. PowerPoint slide presented at the 11th International Congress on Ericksonian Approaches to psychotherapy: Transforming Ericksonian Methods, Phoenix, AZ. PowerPoint retrieved from http://www.ericksoncongress.com/handouts/

プレゼンターの連絡先:

Jeffrey K. Zeig, Ph. D.
エリクソン財団のウェブサイト:www.erickson-foundation.org
ジェフリー・ザイグのウェブサイト:www.jeffreyzeig.com

 

 


 

このレポートの著者

尾崎 望 (オザキ ノゾム)
所属:アメリカフロリダ州、Nova Southeastern Universityの家族療法博士号学生、学校運営のBrief Therapy Instituteのセラピスト
興味のある研究:セラピー、スーパーヴィジョン、そして教育の場における文脈的現象、ブリーフセラピーおいてセラピストがクライエントの内に喚起する経験、等。
連絡先:
このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

Copyright © 2017 家族心理.com. All Rights Reserved.
Joomla! is Free Software released under the GNU General Public License.