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【若手家族心理学研究/家族療法家に聞きました】

 

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仙台市スクールカウンセラー
上西 創 先生

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 

 

 

 

 

どのような分野・現場で臨床に携わっていますか?

 スクールカウンセラーとして中学校2校と小学校1校、あとは内科のクリニックでカウンセリングをしています。もともと学校臨床には興味があったので、今の仕事は楽しくてしょうがないです(笑)クリニックの方も小学生からお年寄りまでいらっしゃるので、非常にやりがいを感じています。 

研究テーマはなんでしょうか?

学部・修士ではTV電話などをつかった遠隔地間でのカウンセリングに興味がありました。コミュニケーション理論では、一つ一つの行動が関係性に影響を与える事が示唆されています。また、その関係性が行動の意味を拘束する(決定する)ことも示唆されています。TV電話などのいわゆるマルチメディアは、対面では作り出せない情況(例えば、意図的に視線を合わないようにさせる、音声を変える、一方だけにTV画面を表示しもう片方は音声のみにする、縦横比を調整して間抜けな顔にする、など)を容易に作り出せるため、行動や関係性の変容を招くのに良いツールになるのでは、と今でも考えています。また、純粋に遠隔地や身体的障害などで中々カウンセリングを受ける機会のない方への間口を拡げる意味でも使えると思っています。  現在は中々研究としての時間は取れずにいますが、クリニックでの臨床を通してパニック障害や鬱の患者さんが増えていると感じているため、それらへの家族療法の活用に関して興味があります。 

家族療法は臨床にどう役立つか、どう役立てていますか?

 考え方の枠を取り外してくれたのが家族療法だと思っています。IP本人だけではなく、家族や教師、職場の同僚などにまでアプローチできるという事はそれだけで解決への方法が広がりますし、困った時にCLに「困ったねぇ。どうしよう?」と伝えるのもアリ。無論、そうすることへの理論はしっかりとあるわけですが、何より「こうしなくちゃいけない」「これをしちゃまずい」と考えていた自分の枠組みを壊してくれたのは非常に大きかったと思います。  同様に、様々な理論や技法を治療に活用できる柔軟性も家族療法ならではだと思います。交流分析やゲシュタルト的なものの見方、認知行動療法的な介入やアサーション・構成的エンカウンターなどを使ったソーシャルスキルトレーニングなど、様々な理論・技法を学ぶ機会を与えてくれたという意味でも、非常に役立っています。 

家族療法家を志したきっかけは何ですか?

 私が岩手大学の学部3年生の時、夏季の集中講義で故・小野直広先生がいらっしゃいました(たしか「心理療法」という講義だったと思います)。その時の講義が心理療法の中でも特に短期療法を取り上げたもので、これが非常に面白かった。小野先生をご存知の方はお分かりになると思いますが、先生はユーモアに長けたお方で、短期療法での成功ケースや失敗ケース、その理論などについてユーモラスに語ってくださいました。このとき、まだ心理学について右も左もわからない上西青年はこう思ったわけです。 

「あ、カウンセラーってこんなんでいいんだ。」

今にして思えば大変失礼な話ではありますが、それまで具体的ではなかった自分の将来について、明確なビジョンが浮かんだのがこのときでした。これが短期療法との出会いであり、のちの短期/家族療法家である長谷川啓三先生との出会いにつながる第一歩でした。この後、岩手県のSFA研究会に参加させていただいたり、小野先生のご著書を読んだりしながら、臨床家への夢を暖めていました。実は、学部生の時は小野先生が教鞭を取られていた東北福祉大学への進学を考えていました。ところが私が学部4年の時、小野先生が急逝なされました。急に目の前が真っ暗になり、どうしていいかわからずにいたとき、先輩である一井直子さんから同じく短期療法を研究されている長谷川啓三先生を紹介して頂きました。一井さんは学部の先輩で東北大学の長谷川先生の研究室に進学されており、私が呆然としているのを見かねた織田先生が一井さんに声をかけてくれたそうです。  なんというか、沢山の偶然の出会いや周囲の方々の好意があって、やっと家族療法に出会えたと思っています。 

お勧めの本(臨床心理の本に限らず、臨床に役立つもの)を教えてください。

「臨床面接のすすめ方-初心者のための13章」(日本評論社)がオススメです。面接をする際の細かい部分での技法や注意点から虐待や自殺企図などへの危機介入の仕方など、様々な要素が事例を含めながら解説されている一冊です。療法によらず、臨床に出る前に読んでおいて損はないと思います。 
 あとは、臨床と関係ありませんが、村山由佳さんの「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズは恋愛小説として最高にステキだと思っています。「最近、さわやかな恋愛してないなぁ」と思う方はぜひご一読ください。 

師・影響を受けた人は誰か

 前述した小野直広先生は、集中講義の時にしかお会いした事がありませんが、この道に入るきっかけを頂いたという意味で非常に影響を受けています。また、SFA研究会を紹介して頂き、その後の進路について相談に乗っていただいた岩手大学の織田信男先生には感謝の念が絶えません。  家族療法に関しての恩師は間違いなく長谷川啓三先生です。セラピーにはユーモアが必要だ!ということを非常に深いレベルで教えていただいたと思っています。また、コミュニケーション論についても体感的に時には自虐的に教えてくださった姿は今でも忘れる事ができません。 

こんなことがありました。


ゼミの最中に話がノってくると、長谷川先生はよく我々とはパラダイムが異なるユーモアを発揮されます。到底凡人には理解不可能なユーモアですが、唯一それを解するODがいました。長谷川先生は明らかにみんながご自身の発したユーモアを理解していないと感じたとき、ちらっとそのODの方を見ます。すると、察したODが的確なツッコミを入れる、と。なんとステキなコミュニケーションでしょう。視線を送るという先生の行為が、ODの次の行為を「ツッコミを入れる」というものに拘束しているわけです。 
 このような事は枚挙に暇がありません。ただ文献を読むだけではイマイチ理解の出来ない事柄も、このような長谷川先生の姿勢により、非常に分かりやすい形で理解できたと思います。 

臨床家のたまごに先輩として一言

 面接の理論や技法はもちろん必要ですが、+αの部分があるといいなぁと常々思っています。今、私は中学校でのスクールカウンセリングの中にグループワークを積極的に取り入れています。昨今、予防的カウンセリングとして注目されているグループワークですが、これには中学・高校時代にやっていたジュニアリーダーというボランティア活動での経験が活きています。これはたまたま中学校の生徒指導主事に「PAやれる?」と聞かれて「何ですか、それ?」と聞き返したときに聞いた話の内容が、ジュニアリーダー時代にやっていた様々なゲームを理論的に展開していくというようなものだったため、「それならやれそうです」ということで始まったものでした。 何が幸いするか、役立つかわかりませんが、勉強以外のことをいろいろとやってみることを強くお勧めします。やっぱり、何か「ウリ」があると魅力的なカウンセラーに見えるものですしね(笑 

【若手家族心理学研究/家族療法家に聞きました】

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心理技術研究会

中野 真也 先生

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 

 

 


 

 どのような分野・現場で臨床に携わっていますか?

精神科の病院で2年勤務した後、スクールカウンセラーや心療内科クリニックのカウンセラーとして働いています。また、2012年より、「心理技術研究会」という研修組織の世話人代表として、システムズアプローチの定期研修や入門WSにおける講師・トレーナーや特別WSの企画・運営をしています。

研究テーマについて教えてください。

とにかくも「システムズアプローチ」です。システムズアプローチによる臨床実践はもちろんのこと、そのものの見方からいろんなことを見ていくことに関心があります。また、まだまだ未熟ながらも立場上臨床家の指導にあたっており、システムズアプローチを本気で志向する人の成長に関わることにやりがいを感じています。なお、システミックなものの見方を適用して「いじめ問題」の研究をしています。

家族療法は臨床にどう役立ちますか、またどのように役立てていますか?

システミックなものの見方は、個に帰するのではなく、人がさまざまなつながり・関わり合いの中で生活していること、家族を含め人の集まりを踏まえて、臨床的な問題や人となりを考えていくのに役立つと思います。徹底してコミュニケーション・パターンの支店からものごとを捉えると、ある程度セラピーで何をどうしたらいいかが見出せたり、多様な変化の方向性を考えられるなどの柔軟な思考につながると思います。さらに言えば、習熟できるほどメタな視点からいろんなモノゴトを考えられるように感じています。

臨床家を志したきっかけ、そしてそのなかでも家族療法家を志したきっかけは何ですか?

もともとは何を目指すでもなく大学に入り、専攻を決める際に「カウンセリングって面白いかも?」と思って、臨床家の教授のゼミに所属しました。そうしたら、ゼミの課題図書が「コミュニケーションの語用論」やG・ベイトソンで、「分からないけど面白い(?)」と思うようになり、その後「システムと進化(当時。今は「家族療法の基礎理論」)」を読んで、システム論やコミュニケーション論の展開としての家族療法に興味を持つようになりました。大学院に進学後、数人の仲間と面白そうな先生・臨床家の文献を集め、話を聞きに行っている中で、システムズアプローチや家族療法に惹かれ、家族療法の臨床家を志すようになりました。

お勧めの論文を紹介してください。

1.東豊著:「家族療法の秘訣」(日本評論社)

東先生の論文集なのですが、読みやすく、見立てやポイントなど基礎的かつ大事な事柄がしっかり述べられています。システムズアプローチや家族療法を学びたい人から「何を読めばいいですか?」と尋ねられたら、まずこっちをオススメしています。

2.高橋規子・吉川悟著:「ナラティヴプラクティス」(邊見書房)

高橋先生の論文集で吉川先生が編集・コメントされているものです。主にナラティブセラピーの視点から述べられていますが、1つ1つの事例が丁寧に書かれており、家族療法の視点からも考えることができます。優れた臨床家の実践が見られる事例集としても価値があると思われます。

お勧めの本(臨床心理の本に限らず、臨床に役立つもの全般)を教えてください。

私の趣味でもありますが、いろんなマンガを読むことが役立っています。ジャンプ系のマンガなどは、中高生と話をする上で盛り上がったり、治療のメタファーに使ったりもしています。また、自分が知らない職業や業界のことをマンガで触れておくと、その分野のクライアントと出会った時にどんな状況でどういう困り事が起きやすいかをイメージするのに役立ったりもしています。もちろんマンガでなくてもいいと思いますが、楽しみつつ、いろんな人の関わりや思いの一端に触れられ、世界を広げられるようなものはあるといいかもしれません。

家族療法のほかにどのようなアプローチを臨床に取り入れていますか?

システムズアプローチ・家族療法をベースに置いた上で、事例に応じて役だつ技法などは取り入れるようにしています。私自身が理屈で理解できないと使えないタイプなのですが、NLPや認知行動療法などを部分的に適宜用いています。

師・影響を受けた人は誰ですか?

いろんな素晴らしい臨床家や先生から影響を受けていますが、敢えて挙げるなら以下のお二人の先生です。

・吉川悟先生(龍谷大学)

吉川先生のロールプレイを拝見したことが、私が家族療法家を目指すきっかけの1つでした。厳しくも大事なことを指導してくれ、そのおかげで少しはマシな臨床家になってきたのだと思います。「かなわんなあ~」と思いつつも、目標としている先生です。

・高橋規子先生(龍谷大学)

「症状や問題は、その人や関わる人たちの行き詰まりの現れ」として考えるなど、人や臨床的問題をどのように見るかを私に教えてくれた先生です。高橋先生による研修のしすてむを引き継いだ今の研究会においても、その教えを活かしていければと考えています。

臨床家のたまごに先輩として一言

臨床家というお仕事・職業は決して簡単なものではありませんが、だからこそやりがいや楽しさ、成長を感じながら続けることが大切だと思います。そのためにも、良き師や仲間を積極的に見つけ、やりとりしていくこと。自分がやりやすく、成長していけるような人との関わりやシステムを自ら作っていくようにすることが自分には重要でした。参考になれば幸いです。

 

 

【若手家族心理学研究/家族療法家に聞きました】 

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九州女子大学 人間科学部講師
相馬敏彦

 

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)
 
 
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①研究テーマはなんでしょうか? 

 私は、二者関係のありようがそれを取り巻く周囲の対人ネットワークによってどのような影響を受けるのかについて主に社会心理学の立場から研究を進めています。ここでは、恋人や夫婦という関係で暴力がエスカレートしやすい背景を、「排他性」という観点から探ろうとした研究についてお話しします。まず、夫婦や恋人といった親密な関係では、部外者を排除して「二人きりの世界」を目指そうと当事者達が排他的に振る舞うことがあります。この排他性は、一方では関係内での協力的なやりとりを促進する効果をもち、暴力の生じにくさを導きます。ですが、他方で、関係内で対立や葛藤が生じた場合の建設的な対処(適切に主張し反論すること)を抑制するようにはたらきます。なぜなら、強すぎる排他性は、関係の外部にあるサポート源(ソーシャル・サポートの与え手)を利用しなくなることと関連するからです。つまり、「二人きりの世界」に固執するあまり、何か問題を抱えたとしても関係外で味方になってくれる人がいないように感じてしまうのです。葛藤時の建設的な対処が抑制されるということは、関係の相手から何か嫌なことをされてもそれに反論したり主張したりできにくくなるということです。すると、そのような状態がしばらく続くと、相手から暴力を受けやすくなったりそれがエスカレートしたりする危険性が高まります。 つまり、親密な関係ではその特徴である排他性が背景要因としてDVの深刻化に影響する、このことをこれまで実証的に検討してきました。(いくつかの公刊されたものについては私のHPよりご覧下さい。


②その研究テーマを選んだ理由・きっかけを教えてください。 

 学部時代に、嫉妬心や独占欲に関心をもったことがきっかけです。じゃあなぜ、それらのことに関心をもったのかはよく覚えていません。ただ、このテーマへの僕の関心を持続させたのは、周囲にいた人たちが、こういった一見ふざけてそうなテーマに関心をもたなかったことがあったような気がします。
  


③師・影響を受けた人は誰か?

 学部・大学院時代の恩師である山内隆久先生と浦光博先生です。自分の関心に基づいて研究を進めることが楽しいことだと学べたと同時に、研究者にとっていかに飲み屋での討論が貴重なものであるか、そしてそこで楽しむためにいかに普段から体を鍛えておくことが必要なのかを身をもって学べたような気がします。

④現在の研究テーマのほかにどのような分野に注目していますか?

 先ほどの研究テーマ以外では、シャイな人がどのようにして対人ネットワークを拡大していくのかについても注目しています。そこでは、次の謎に焦点をあてています。それは、大学入学などの新たな人間関係が形成される場面で、シャイな人はよく知らない相手となかなか打ち解けられないにもかかわらず、しばらく経つとシャイではない人と同じようにネットワークを拡大できる、それはなぜかという謎です。このことについて、シャイな人は少数ながらも仲のよい友人に社会的な代理人となってもらうことで、対人ネットワークを拡大している過程を検討しています。 


⑤お勧めの本もしくは論文を教えてください。

 「DVと虐待-『家族の暴力』に援助できること」(信田さよ子著、医学書院、2002年)です。
「当事者性の不在」という言葉でもってDV問題を解説している点は、虐待問題について深く理解する上でとても示唆に富むものだと思います。他には古いですが、「寺田寅彦随筆集」(岩波文庫)がお薦めです。物理学の専門的な話は完全には理解しがたいのですが、それでも量的研究と質的研究との違いに関する考察などは分野を超えて意義深い指摘であるように思えます。 


⑥家族心理学に興味を持つ後輩に一言。

 特に僕が言えることはありません。強いて言えば、好きなように研究すればよいと思います。

 

【若手家族心理学研究/家族療法家に聞きました】

 

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同志社中学校・高等学校

岩本 脩平 先生

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

 

 

 


 

ーどのような分野で臨床に関わっていますか?

 学校臨床の分野に携わってきました。大学院を修了してから現在まで勤務している私立中学校では、生徒が困った時や気持ちが疲れた時に利用することができる別室を作ったり、生徒のストレスチェックを実施したり、教室に授業支援員を派遣する仕組み作りをしたりと、教育相談や特別支援教育の拡充にかかわる仕事をしてきました。また、週1日は市内の公立中学校でスクールカウンセラーとして勤務しています。

 

ー主な研究テーマを教えてください

 主に関心を持っているテーマは2つです。まず、学部の頃から関心を持ち続けているのは不登校問題です。不登校の生徒を家庭から教室へとつなぐ過程において、有効な働きかけや学内の仕組みの在り方について、日々の実践の中でも模索しています。また、予防的観点からすれば、不登校対策は「中1ギャップ」をいかに埋めるかという課題と重なる部分があると考えています。学校で勤務する心理士として、個別対応が必要な生徒の「中1ギャップ」を埋めるための手立てを考えていきたいと思います。

 2つ目に関心を持っているのは、リフレクティング・プロセスの実習場面への活用です。数年前から授業補助員の学生さんや学校臨床の実習生さんの活動をコーディネートさせていただいていますが、学生さんたちが自らの活動を振り返る際に指導者側が一方的にコメントをするよりも、リフレクティング・プロセスを用いることで彼らの「腑に落ちる」体験を提供できるのではないかと考えています。

 

ー家族療法は臨床でどう役に立っていると思いますか

 「相互拘束」の考え方は教育現場においては有益な視点だと思います。問題を呈している生徒の内面に問題があるとするのではなく、周囲の働きかけがその生徒の問題行動を拘束し維持していると考えることで、生徒の行動変容を促す関わり方を模索できるようになるからです。特に特別支援教育を行っていく上では、欠かせない概念だと感じています。

「相互拘束」の概念が重要なのは授業でも同じです。校種は違いますが私も大学で講義をさせていただいています。その中で、講義中に学生さんが寝てしまうのは、試験で良い成績がとれないのは、小レポートの空白が多いのはどうしてなのかといった悩みを持つことがあります。この問いに対して、「あの学生は怠けているから仕方がない」と、個人内に問題が存在しているかのように見てしまうと、教員側からの工夫は行われません。一方、「相互拘束」の観点から見れば、「現在の授業のリズムが学生さんを眠たくさせているのかもしれない」「大切な部分を講義中に強調できていないのかもしれない」などと考え、授業を改善することができます。「生徒は教師の鏡」と言われますが、まさに学生さんの反応は私の至らない講義を修正するように「拘束」してくれていると感じます。

 

ー家族療法家を志したきっかけを教えてください

 大学院時代にロールプレイの授業を担当して下さっていた花田里欧子先生(現:東京女子大学)に相談をしたことがきっかけになりました。当時、自分の軸となる理論を探していた私に、『よくわかる!短期療法ガイドブック』を紹介してくださいました。見立てにつながる理論の緻密さ、ユーモアに富んだ介入、見立てと介入をつないでいく言葉の用い方など、短期/家族療法は鮮烈なインパクトがありました。

それからというもの、短期/家族療法を学びたい有志のメンバーで『精神の生態学』や『コミュニケーションの語用論』を読みあったり、リフレクティング・プロセスを用いた面接練習をしたりするようになりました。小手先の技法だけに偏ることなく、理論と実践の両面を大学院時代に学ぶことができたことがありがたかったと感じています。

 

ーおすすめの書籍・論文はありますか?

『変化の原理』(ポール ワツラウィック (著), リチャード フィッシュ (著), ジョン・H. ウィークランド (著))が好きです。短期/家族療法はその介入や質問法の派手さから、技法に関心が向きやすい傾向にあるように思います。しかし、その背景には「変化」についての理論があります。この理論を知っているか知らないかで、自分の実践を振り返る際の精度は大きく異なるのではないでしょうか。MRIの先人たちが、理論をいかにして実践につなげていたのかを知ることができる一冊だと思います。

 

ー影響を受けた師・先生は誰ですか?

多くの先生に影響を受けましたが、あえて挙げるとすれば、2名の先生です。まずは短期/家族療法への扉を開いてくれた花田里欧子先生です。ゼミ生でもない私に短期/家族療法を学ぶ機会を提供してくださいました。大学院を修了した後も、スーパーバイザーとして、研究の師として、あるいは「短期療法を学ぶ会京都」のリーダーとして引き続きご指導いただいております。

また、大学院時代にご指導いただいた内田利広先生には、学校臨床や臨床家としてのスタンスを教えていただきました。興味・関心のある内容を自由に追求することができたのは、いつも温かく見守ってくださった内田先生の存在があってこそだと思っております。2014年に開催された家族心理学会第31回大会では、内田先生が大会長、花田先生が事務局長を担当されました。お二人の下で共に実行委員として活動できたことは、うれしい記憶として残っています。

 

ー家族療法のほかにどのようなアプローチに注目していますか

 有効なアプローチであれば、どのようなものでも活用したいとは思うのですが、最近研修に参加させていただいたのは「ホログラフィ・トーク」です。ホログラフィ・トークとは、軽催眠状態で行うトランスワークで、トラウマ等への治療に用いられます。身体感覚に注目する点や、イメージを用いて行う点が以前に学んでいたフォーカシングと通じるところがあり、馴染みやすさを感じました。

 

ー臨床家のたまごに先輩として一言お願いします

 自分の趣向に合う理論に出会うのは、人それぞれタイミングがあると思います。学生の間に見つけられることもあれば、なかなか見つからないこともあるでしょう。とはいえ、現場に出る時に「何となく折衷派」では、臨床家としての専門性が担保されないのではないでしょうか。自分に合う理論を探し、学ぼうとする姿勢は常に必要だと思います。最初は「とりあえず」とか、「お試しで」という気持ちで構わないので、まずは本を手に取って、そして関心のある研修会に参加して自分にとって「もっと学びたい」と思える理論に出会って下さい。

 

家族療法家の第一人者にインタビュー
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davidmcgillDAVID MCGILL Ph.D

ハーバード大学精神医学部ファミリーセラピー
                    スーパーバイザー 
ケンブリッジ病院カップルズファミリーセンター
                    スーパーバイザー

International Family Therapy Association board
                   (国際家族療法学会理事)

American Professional Psychology association diplomat Family Therapy SpecialistAPA Family Psychology Association medical specialty advance specialty
個人開業

(先生の御所属はインタビューがされた当時のものです。)

インタビュアー 生田倫子 
(メキシコ家族療法学会にてインタビュー)

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Q.MCGILL先生の研究テーマを教えてください。

 

 私は家族療法家であり、世代関係を研究する心理学者です。社会変化の展望がテーマです。ボーエン、フレモ、アッカーマン、構造派、MRI、ナラティブに影響を受けてきました。
 私の研究の興味は、30年前から世界中の文化における社会変化(Social Change)です。世代間関係がどうなるか、どのように社会変化が起こっていくか、女性の変化、結婚形態の変化、夫婦関係の変化、など。70年代はケンブリッジでポルトガルの移民の世代関係を研究し、80年代は日本の社会変化と世代関係を研究しました。
 自国の文化を客観的に見ることは難しく、外国人と共同で観察することが、一番よいスタイルと考えています。

 

Qどんなクライアントを対象にしていますか。

 

 精神医学の病院なので、いろいろな症状のクライアントが来ます。貧困家庭や中流家庭、 恐怖症、うつ病、DV、性的虐待、国際結婚の問題(ボストンとケンブリッジはいろいろな文化からクライアントが来る)。プエルトリコから移民もくる。家族療法家がスペイン語も話します。移民の問題、適応、世代関係に興味があります。
 あるケースでは、ポルトガルのアソレス島から来た両親が英語が出来ず、かつ思春期の文化があまりにも違い、恐怖を感じていました。そして貧しく、かつ適応が難しかったのです。父親の就職が困難で母親も働かねばならず、関係が壊れ、勢力が逆転した。ジェンダーの問題、世代間の問題、そして家族関係の問題、うつが関わっていました。このケースで一番難しかったのは思春期の娘との関係でした。アソレス島では思春期の男女は窓越しに話すだけ。まるでイスラム文化のようなのです。なので両親は、娘が染まるアメリカの思春期の性的な文化がまるで受け入れられず、恐怖を感じていたのです。

 

Q:日本の社会変化を研究されたということですが。

 

 日本家族療法学会の会員でもあるが、1984年から2年間家族と京都に住んでいました。淀屋橋家族療法クリニックでスーパーバイザーもしていました。鈴木浩二先生と中村伸一先生、渋沢先生と関わり、鈴木浩二先生がいた千葉の国立精神衛生研究所にも行きました。

 

Q日本の家族の印象はどうでしたか?

 

 淀屋橋家族療法クリニックではたくさんケースをみましたが、ほとんどのケースが登校拒否でびっくりしました。この驚きは外国人ならではと思います。アメリカにはこのような登校拒否はありません。確かに、小学校でのスクールフォビア(学校恐怖)はありますが、思春期には非行とか家に帰らないとかが問題になります。でも日本の登校拒否は主に思春期の問題であり、かつ家にいるというのが不思議。変!!へーん!! 特別な兆候と思います。社会的な症状と思いました。つまり社会拒否といえるでしょう。

 

Qどのように、社会変化と関連付けた考察をされましたか?

 

 日本の戦後世代は、ショックとそれへの反逆がが仕事でした。次の世代は60,70年代くらいですが、仕事仕事仕事と邁進しました。80年代は日本は安泰で、成功が関心だったといえるでしょう。しかしその後の世代が大きく変化します。成功という社会の目的は達成され、他の目的がなく可能性がなくなってきました。しかし旧2世代、つまり祖父と親は同じ価値観、つまり勉強と仕事をがんばれがんばれという同一価値観を持っています。
 しかし、他の動機が発達せず、つまり余暇がないために、人間関係が夫婦も子どもともあまりありません。父親と子どもの「大きな尊敬」と「少ない関係」が、目的の無さや適応の問題を生むのです。社会拒否、意味のなさ、就職の難しさ、ライフプランとフィットしない、という問題が生じます。
 日本の夫婦関係は、変化があるようでない、不思議な印象があります。父親役割・母親役割から違う役割へと変化しないのか?というのが興味です。

 

若島:日本の引きこもり児は社会に出る必要がないと感じているようですが。

 

 食べることが出来なかったら外に出るのにとも思いますが。引きこもりの親の勉強は役に立ちます。私の展望を1986年に中村伸一先生らと一緒に発表しました。摂食障害拒食症は社会のメタファーだということ。登校拒否は社会的拒食症だと思っています。摂食障害の別の文化のタイプ。人間関係がない、できないのです。
 アメリカと比べて思春期の登校拒否はあまり悪くない。友達がいて、勉強も大丈夫であることも多いのです。たぶん親の夫婦関係が悪く、父親不在で、社会拒否であるといえます。
 アメリカでは学校は勉強やスキルを学習する場所です。アメリカは個人主義的で集団がありません。社会がないのです。しかし日本においては学校は勉強と集団適応を学ぶ所。外人の視点でいえば、集団関係が一番大切な目的であるように見えます。つまり友達を作るということや、社会集団を学ぶことが重要視されます。だから登校拒否は勉強というよりは集団拒否に見えます。

 

Q 将来の日本の問題はどのようなものと思いますか?

 

 将来の現象として、自殺、中高年の自殺、熟年離婚、ジェンダーの問題、嫁拒否、妻が夫との離婚を望むということを予測します。近年の、日本の女性が結婚したくないという問題も、たぶん「嫁」拒否があるはずです。嫁の意味は前の「家」システムですし。

 

Q家族療法の展望をどのように考えますか?

 

 異国間のコラボレーションがとても役に立つと思います。他の国を見て、自国に帰るとそれだけでパースペクティブを持つことができます。個人的な視点ではなく、文化的視点を持つことを期待しています。

 

Qお勧めの本を教えてください。

『Ethnicity&Family Therapy』 Monica McGoldnick・Joseph Giordano・Nydia Garcia-Preto(編)

 

Q日本の家族心理学・家族療法を学ぶ学生に一言。

 

ぜひ世界へ来てください!

 

 

 

 

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